研究実績の概要 |
子宮頸癌はヒトパピローマウイルス (HPV)の持続感染によって生じるウイルス発癌である。子宮頸癌のほぼ100%からHPV DNAが検出される。わが国の子宮頸癌では、HPV16型が40-50%を、HPV18型が15-20%を占め、発癌性HPVといわれる13タイプの中でもHPV16, 18, 31, 33, 35, 45, 52, 58型の8タイプが子宮頸癌の90%以上を占める。HPVタイピングは子宮頸部前癌病変の進展リスク評価に臨床応用されているが、頸癌における有用性は確立していない。 HPV18型陽性癌では腺癌が多く予後が悪いという報告があるが、本研究では「HPV16型陽性頸癌」、「HPV18型陽性頸癌」、「HPV16/18型陰性頸癌」という疾患概念を確立させ診断・治療に役立てることを目的とする。HPV型によって組織型の分布や予後が異なることから頸癌としての特徴を決定するメカニズムはHPVゲノムの中に存在すると考えられるが、発癌過程でHPVゲノムがヒトゲノムに組み込まれる際の組み込み部位が子宮頸癌の特徴を決める可能性がある。 HPVタイピングや次世代シーケンサーを用いたHPVゲノムの配列解析はすでに確立しており、順調に成果を報告してきたが、HPVゲノム組み込み部位解析は難航している。まずは、次世代シーケンサーを用いて組み込まれたHPVゲノム側から組み込み部位の塩基配列を同定する方法で解析を試みた。ごくわずかにで解読できたものもあるが、解析系を確立できなかった。組み込まれたウイルスゲノム側から隣接するヒトゲノムをシーケンスする方法には限界を感じ、その後は子宮頸癌患者のゲノムmRNA解析によって予後良好な子宮頸癌と予後不良の子宮頸癌のあいだで発現に差が見られる遺伝子群を同定することで再発リスクの高い組み込み部位を同定することを検討したが、現在までに十分な成果を得られていない。
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