研究実績の概要 |
子宮頸がんおよび前がん病変の患者の頸管粘液中において特異的に強い発現をしているマイクロRNA(miRNA)をみつけるために、マイクロアレイを用い健常人の検体との比較を行いながら網羅的に検索した。その結果、76種類のmiRNAが選択された。そこで、realtime RT-PCR法を用い、その発現の多寡の正当性を確認したところ、22種類のmiRNAの発現が高いことがわかった。この中で、特に健常人との発現レベルの差が大きい4種類のmiRNA(miR-126-3p,-20b-5p,-451a,-144-3p)を選び、合計230人の臨床検体を用いてその発現レベルが病変の推移に伴って増強するか否かを検討した。 正常、前がん病変(CIN)、がんおいて発現強度は病変の進行に伴い増加することがわかった。統計解析を行ったところ、正常とCIN1では有意差が認められないが、CIN2以上の病変では有意差をもって、異常値を示した。細胞診の判定においても、NILM,LSILでは差は認められないが、HSIL以上の病変を有する場合に有意差が認められた。HPVの感染の有無について解析したところ、HPV未感染に比べ、ハイリスク型HPVの感染において有意差をもって発現強度の違いが認められた。 次に検査としての性能を調べるため、異常値のカットオフ値を決定し、病変の検出感度、特異度を調べたところ、浸潤がんの病変を検出する感度はmiR-126-3p,-20b-5p,-451a,-144-3pにおいてそれぞれ0.81, 0.74, 0.83, 0.87であり、特異度はそれぞれ0.91,0.93,0.91, 0.89であった。陽性尤度比はそれぞれ、9.0, 10.57, 9.22,7.91陰性尤度比はそれぞれ0.21,0.28,0.19,0.15である。補助診断としては有用であることが分かった。
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