研究実績の概要 |
子宮頸がんおよび前がん病変の患者の頸管粘液中において特異的に強い発現をしている4種類のマイクロRNA(miRNA)を同定した(miR-126-3p,-20b-5p,-451a,-144-3p)。そこで、これらのmiRNAの子宮頸癌組織における発現の多寡を定量的RT-PCRで解析したところ、いずれのmiRNAにおいても、正常に比べ高い発現量を示すことがわかった。4つのmiRNAの中で患者間での発現量の変動を認めないmiR-126-3pを選び、さらにその発現の局在をin situ hybridization法にて解析したところ、腫瘍細胞内のリンパ管内皮だけでなく扁平上皮・腺がん細胞の両方で発現していることが明らかとなった。そこで、miR-126-3pが子宮頸部発がんに及ぼす効果について子宮頸癌由来培養細胞を用いて評価することにした。培養細胞にmiR-126-3pを遺伝子導入し、増殖能、細胞移動能、浸潤能、アポトーシスとこれらに関連するタンパクの発現の多寡を解析した。遺伝子導入により増殖能、細胞移動能、浸潤能は抑制され、PI3K,PDK1、リン酸化AKTの発現低下が観察された。そこで、PI3K/PDK1/AKTシグナル伝達経路にある関連タンパクの発現を解析したところ、GSK3b、Cyclin D1,p70S6K,S6,PAK1,ROCK1 MRCKa,PLCg1の発現低下が示された。一方、BAD, BAXの発現は上昇するもBCL-xLは発現低下し、Caspase3/7の発現が上昇していたことから、アポトーシスは促進していた。miR-126-3p遺伝子導入により細胞増殖の抑制がみられ、アポトーシスが観察されたことから、PI3K/PDK1/AKTシグナル伝達経路を標的とした新たな子宮頸癌治療開発の可能性が示唆された。
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