研究課題
TEAD4は細胞の増殖・移動能を制御する細胞遺伝子群の発現制御に関わる転写因子である。我々はこれまでに、ヒトパピローマウイルス(HPV)の癌タンパク質E6がTEAD4の発現レベルを上昇させ、細胞の変異原タンパク質APOBEC3Bの発現を誘導することを明らかにしている(Journal of Virology, 91: e02413-16, 2017)。発現誘導されたAPOBEC3Bは、細胞ゲノムに変異を入れることで、子宮頸癌の発症に深く関わっていると考えられる。本研究は、TEAD4によるAPOBEC3B発現誘導の分子機構の詳細を明らかにし、TEAD4を介したHPV発癌機構の全体像を解明する。これまでにもう一つのHPV癌タンパク質E7が、ヒト子宮頸部角化細胞でTEAD4の発現を誘導することを見出しており、今年度はE7タンパク質によるTEAD4発現誘導機構を検討した。ヒトTEAD4遺伝子のプロモーター領域(700 bp)を、ヒト培養細胞DNAからPCR増幅し、リポータープラスミドpGL3-basicにクローニングした。HeLa細胞及び293細胞でのリポーターアッセイにより、TEAD4遺伝子断片は有意なプロモーター活性を示した。このプロモーター領域を上流から削った断片(500 bp及び300 bp)を作成し、同様にpGL3-basicにクローニングして、293細胞でのリポーターアッセイによりプロモーター活性に必要な領域を検討した。その結果、700~500 bpの領域にプロモーター活性を上昇させる配列が存在することが示された。さらにE7発現プラスミドを293細胞に導入した際の、TEAD4プロモーター活性の挙動を調べたところ、予想に反してE7は700 bp断片からのプロモーター活性を抑制することがわかった。この抑制は500 bp断片では減弱したことから、700~500 bpの領域にE7に応答する配列があることが示唆された。
3: やや遅れている
レトロウイルスによるE6またはE7を発現するヒト子宮頸部角化細胞の作成に時間を要し、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析が実施できていない。
これまでに作成したE6/E7を発現するヒト子宮頸部角化細胞を用いて、E6/E7によるTEAD4誘導を介して発現が変動する細胞遺伝子群を同定する。
年度末納品等にかかる支払いが平成31年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、平成30年度分についてはほぼ使用済みである。令和元年度はTEAD4を介して発現が変動する細胞遺伝子群の同定に使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件)
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