研究実績の概要 |
HPV16の三つのバリアント(A1, A4, A5)は子宮頸癌の進展リスクが異なり、A4は子宮頸癌で検出頻度が高く、A5は子宮頸部軽度病変で検出頻度が高い。これらのHPV16バリアントは、それぞれ特徴的なアミノ酸配列を持つE7タンパク質をコードしている。これらのE7の細胞機能の違いを明らかにするために、A1, A4, A5のE7を発現する組換えレトロウイルスを作成し、ヒト子宮頸部角化細胞株(HCK1T)に感染させて、それぞれのE7を安定に発現する細胞(HCK1T_A1, HCK1T_A4, HCK1T_A5)を得た。同時に比較対象としてベクターウイルスを感染させた細胞(HCK1T_V)も作成した。これらの細胞から全RNAを調製し、次世代シークエンサーによるRNA-seq解析を行った。 TCC-GUIにより発現変動遺伝子(DEG)群を探索した結果、10% FDRを満たすDEGとして、HCK1T_A1/A4/A5とHCK1T_Vの比較では59遺伝子、HCK1T_A4とHCK1T_A1/A5の比較では48遺伝子、HCK1T_A5とHCK1T_A1/A4の比較では37遺伝子が抽出された。E7を発現しているHCK1T_A1/A4/A5ではコントロールのHCK1T_Vと比べて、MCM2, MCM5, MCM7などの細胞周期に関連する遺伝子群の発現上昇、IFIT2, IFI44Lなどの抗ウイルス遺伝子の発現低下が認められた。さらにE7バリアント間で発現量が異なる遺伝子として、HCK1T_A4でTOMM6の発現上昇、ZC3H11Aの発現低下、HCK1T_A5でZACNの発現上昇、MFSD2Bの発現低下が検出された。一方、E7により発現が誘導されることが示されているTEAD4及びAPOBEC3Bの発現上昇はHCK1T_A1/A4/A5で認められなかった。
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