研究課題/領域番号 |
17K11314
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
堤 剛 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90302851)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 眼球運動 / 三次元解析 / 耳石 / 重力認知 / 転倒 / 平衡機能 |
研究実績の概要 |
・ヒトの前額断面頭位変化時の眼球反対回旋(OCR)を利用した耳石眼反射の持続的な計測システムを構築し、uprightから側臥位までの頭位傾斜に伴うOCR変化の特性を解明した。側臥位90度に達する前にOCRはピークを越えて低下する傾向があり、静的頸眼反射(COR)のゲインの増加に伴うものと考えられた。静的CORの入力を解明するため頭部を重力に対して固定し体幹を傾斜させて頸部側屈を負荷するタスクと、側臥位にて頭部を支持した状態から支持を外して頸筋の緊張を負荷するタスクによる実験を計測している。静的CORには頸筋の緊張の方が寄与が大きい結果が得られつつある。 ・ヒトの矢状断面頭位変化時の眼位平面傾斜を利用した耳石眼反射ゲインの計測システムを構築し、uprightから仰臥位までの持続傾斜による特性の解明を進めている。前額断面同様90度仰臥位に向けて飽和していく被検者と、直線的に眼位平面傾斜が増加していく被検者があるが、計測ポイント数の限界によるものであり本来飽和傾向を示すものと思われた。 ・上記結果を参照し、高度前庭障害および高齢者のデータ蓄積を開始している。 ・回旋性眼球運動ノイズ除去のため、回旋性サッケードの振幅と角速度の特性(main sequence)を解明した。 ・高度のふらつきを訴える症例において、視覚刺激外乱時の眼位平面の描出制度の低下の原因の一つとして、視運動性眼振の視覚抑制低下の可能性が示唆されている。 ・マウスの眼球運動の計測システムを構築し、持続的な頭部傾斜負荷により弱い飽和傾向のある反対方向への眼球変位・回旋(前額断・矢状断面とも)の計測に成功した。この反射は内耳有毛細胞KOマウスでは消失していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・静的耳石眼反射の計測システムにおける持続的傾斜負荷下のモデルデータが構築された。 ・静的頸眼反射の影響など新たな発見がなされており、その領域への研究に発展している。 ・マウスの眼球運動の三次元解析システムの構築という新たな領域への進展も進んでいる。 ・視覚外乱負荷による重力認知の耐性評価については、健常者と前庭障害例の間での最適刺激強度の決定に難渋してる。 ・以上より、計画以上に進展している点や新たな領域にまで発展した点と、計画より遅れている点が混在している。
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今後の研究の推進方策 |
・これまでのヒトの計測システムを改良し、頭位および体位の磁気センサの精度を大幅に向上させ、頭部の連続的傾斜負荷による耳石眼反射の特性評価をさらに精密に行うシステムを現在構築している。眼球運動の三次元計測アルゴリズムにも継続して改良を加えており、より精度の高い計測により、頭位変化に限らず様々な外乱負荷下での耳石眼反射の厳密な特性評価を進める。 ・高度のふらつきを訴える症例において、眼位平面の厚み(精度)の低下だけでなく頸眼反射への依存度の上昇がある可能性が示唆されており、ふらつきのパラメータとしての可能性の検証を進める。 ・マウス眼球運動三次元解析の精度、特に回旋眼位計測の精度向上のため、角膜へのレーザーによるポイント付加の実験を進めている。これにより正確な三次元眼位特定を可能とし、さらにPendred症候群モデルマウスや加齢性内耳障害モデルマウスにおける耳石眼反射の老化のパターンを特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の余剰金であり、このまま次年度の研究継続のため使用する。
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