研究課題/領域番号 |
17K11314
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
堤 剛 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90302851)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 耳石眼反射 / 重力認知 / 頸眼反射 / 平衡障害 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
・矢状断面および前額断面の両方向で、頭位傾斜に伴うListing平面変化のゲインを利用した耳石機能の定量化手法を確立し、論文化した。また、そこに混入する静的頸眼反射が存在することを世界で初めて発見し学会報告、現在その定量化と特性評価を行っている。頸眼反射はこれまで前庭動眼反射を補完する動的なものしか報告されてこなかったが、静的頸眼反射は耳石眼反射を補完する方向とは全く逆向きに機能していることがわかり、耳石機能や重力認知機能を評価するうえで分離することが必要不可欠である。その生理学的意味合いを探るため、種々の条件下での計測を進めている。 ・これまで医療用の赤外線ビデオ眼振計と頭位センサを用いて研究を進め、その解析アルゴリズムの改良を進めてきた。近年非医療用途(ゲーム等)のVRゴーグルが多種開発されている。この中で、視線追跡機能を持ちかつ頭位センサを搭載可能なものを選定し、その視線追跡機能を利用した三次元眼球運動解析アルゴリズムを新規に開発した。これにより安価かつ高精度の三次元眼球運動解析機器の開発の可能性が見えたため、診療所でも普及可能な機器として開発を開始した。現在検査メニューの構成とユーザ・インターフェースの決定を行っている。また、これを用いた重力認知機能評価のアルゴリズムを作成し、計測メニューを機器にマウントし、現在その検証作業のためのデータ収集に入っている。VR機能を利用することにより視覚外乱負荷を用いた重力認知機能評価へも大きく道が開かれ、さらにデータのサーバ共有により、コロナ禍で必須となる在宅診療を可能とする診療所と専門施設の連携や、自宅でのリハビリテーションとその遠隔評価も可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・眼位の3次元解析による頭位変化時の耳石眼反射の定量化を実用化した。 ・静的前庭眼反射計測時に、静的頸眼反射が併存することを世界で初めて特定し、その特性評価を進めている。これを分離することでより正確な耳石機能評価が可能となる。 ・汎用のVR機器を利用した新たな計測アルゴリズムを構築した。これにより、診療所と専門施設でのデータ共有と連携した診療体制構築へ向けた新たな機器開発に着手している。 ・COVID-19の感染拡大により、臨床症例や高齢者のリハビリテーションのフォローアップが不可能となり、在宅リハビリテーションのデータ共有によるシステムへ方向を切り替えた。現在、診療所と専門施設で使用可能な機器の検査メニューとユーザーインターフェースの確定と、プロトタイプへのマウント・検証を行っている。 ・VRのシステムへの変更に伴い、視覚外乱負荷のシステムについても刺激画像をこちらに組み込む形となる。現在縦線条の視運動刺激を組み込み、外乱負荷の評価を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
・VR機器を利用した開発を進める。通常の眼球運動検査メニューを組み込んだ安価な機器として開発し、匿名化したデータをサーバにアップロードする形で専門施設と共有、高度な解析と診断の提供を可能とする。 ・これにこれまでに開発してきた眼位の3次元解析とListing平面評価、視覚外乱負荷を組み込み、診療所における転倒リスク評価と高リスク症例の抽出を可能とする。 ・さらに、同じ機器を利用した頭部運動による前庭リハビリテーションと、データのサーバ共有による遠隔評価、オーダーメイドのリハビリ設計システムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大により通常診療が大幅に制限され、一般の患者さんやリハビリテーション症例へのアプローチが困難となった。このため、遠隔診療の可能な機器の開発へとシフトしたが、余剰金が少額生じたため、開発継続に使用する目的で次年度への延長申請を行った。
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