研究実績の概要 |
全身投与したアミノグリコシド系抗菌薬は内耳有毛細胞に進入しアポトーシスを引き起こすが、その進入経路の全容は解明されていない。これまで、主にin vitroの研究によりマウスの有毛細胞へのアミノグリコシド系抗菌薬の進入経路の候補として、エンドサイトーシス、機械電気変換(sensory mechanoelectrical transduction, MET)チャネルなどが挙げられている。本研究では、エンドサイトーシスの活性は有するがMETチャネルを欠損する有毛細胞をもつTmc1;Tmc2遺伝子改変マウスと野生型マウスを用いて、全身投与したAGの有毛細胞への取込を比較検討した。 Tmc1Δ;Tmc2Δマウスの有毛細胞におけるエンドサイトーシスの活性を確認するため、P2の野生型とTmc1Δ;Tmc2Δマウスから蝸牛感覚上皮を摘出し培養した。カチオン化フェリチンを添加した培養液中で、4℃(エンドサイトーシスの活性が抑制される)または37℃で2時間培養した。洗浄、固定の後、脱水、包埋、薄切、染色し透過型電子顕微鏡で観察した。P2のTmc1Δ;Tmc2Δと野生型マウスの蝸牛感覚上皮を、カチオン化フェリチンを添加した培養液で4℃または37℃で培養した。4℃培養群の感覚上皮はTmc1Δ;Tmc2Δも野生型も有毛細胞内にフェリチンを含む小胞を認めず、37℃培養群は両マウスの有毛細胞内にフェリチンを含む小胞を認めた。これは先行研究とも一致してTmc1Δ;Tmc2Δの有毛細胞がエンドサイトーシスの機能を有することを示した。
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