研究課題/領域番号 |
17K11319
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大島 伸介 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70632438)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前庭領野 / マウス / フラビン蛋白蛍光イメージング |
研究実績の概要 |
前庭系においてはヒトやサルでは島後方のPIVC(Parieto Insular Vestibular Cortex)が前庭領野にあたるが、マウスなどの小型動物では同定されていない。PIVCの機能を解明することにより、前庭障害後の中枢代償やめまい感のメカニズムの解明、めまい治療やリハビリへの応用が期待できる。本研究ではフラビン蛋白蛍光イメージングを用いたマウスの前庭領野の同定が目的である。 本研究の初年度は、マウスに対して適切な前庭刺激を探ることから開始した。5-8週のCB57BL/6マウスを用いて、カロリック冷刺激による前庭機能低下刺激や、逆に温刺激による前庭機能亢進刺激を与えても、平衡障害を示す眼振所見の再現性は高くなかった。 そこで2年目である今年度は、カロリック刺激以外の刺激として、経外耳道的に鼓室内に電気刺激を与えるガルバニック刺激を試みた。導電気刺激装置からアイソレーター(日本光電SS-203Jを導入した)を介してbiphasic刺激を出力し、直径0.5mm程度の針電極針を経外耳道的に鼓室内の前庭窓へ留置して電気刺激する方法である。他の動物種で実績のある刺激法だがマウスに行った報告はなく、適切な刺激方法、刺激強度などのパラメータを探った。 刺激方法の工夫として、まず刺激針電極からの体性感覚刺激を避けるために電極先端以外の部分は絶縁し、手術手技的には耳介や鼓膜、耳小骨などの前庭層より浅い部分の組織を可及的に除去した上で、確実な固定を目的に瞬間接着剤を用いる術式に変更した。また電気刺激の電流値、刺激周波数を変更したところ、刺激周波数に応じて反応する大脳感覚野が変化する所見を得た。すなわち、低周波数刺激ではPIVCと思われる前庭感覚野、より高周波刺激では聴覚野が反応することを示唆する所見が得られた。今後、再現性を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず前庭刺激として確実に前庭機能低下、または亢進させなければ本研究を進めていくことは困難である。ガルバニック刺激による前庭領野反応の再現性を高める手術手技、適正刺激を見出す段階にとどまっているため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ガルバニック刺激による前庭領野PIVC領域の反応の再現性を高め、マウス大脳皮質の前庭領野を同定する。 まだ再現性が乏しいものの、ガルバニック刺激の刺激周波数によって、前庭領野のみならず聴覚野も反応を示すことを示唆するデータが得られており、前庭領野と聴覚野の相互関係を解明したい。聴覚野のみならず、視覚、体性感覚刺激による前庭領野の反応性をフラビン蛋白蛍光イメージングを用いて検討することにより、前庭刺激以外の刺激(視覚、体性感覚)で前庭領野の反応に可塑性が生じるなら、めまいのリハビリに応用できる可能性がある。視覚刺激はマウス正面から30cm離れた位置に赤色LED(λ=613nm)を1秒間点灯、体性感覚刺激は機械刺激装置の先端に綿棒を取り付け、50Hz、1秒間の振動刺激を尾の根元部分に加える予定である。前庭障害後の中枢代償や前庭刺激以外の感覚刺激による前庭領野反応を解明することにより、めまい治療やリハビリへの応用が期待できる。 さらに、われわれがマウスを実験動物に使用する理由は、遺伝子改変マウスを使用できることである。加齢性難聴のモデルマウスを用いれば、高齢者の平衡障害患者に対する治療、リハビリプログラムの新規開発に有用な所見が得られると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)現在は予備実験的な先行実験を反復しデータの再現性を高める事、また本研究において重要な前庭刺激方法やその刺激パラメータの再現性を高めている段階である。今後は本研究のテーマであるマウス前庭領野の同定、さらにその可塑性を解析する予定であり、さらに研究の継続が必要である。 (使用計画)実験用マウス、麻酔薬などの薬剤、固定器具などの消耗品等に使用する。また研究成果発表や情報収集のための学会参加時の旅費などにも使用する予定である。
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