研究実績の概要 |
先天性難聴は新生児1,000人に1人に認められる比較的頻度の高い障害であり、その原因のうち約50~60%に遺伝子が関与することが示唆されている。現在までに 難聴の原因として約100種類以上の遺伝子が同定されており、原因遺伝子変異の種類により、難聴の程度、難聴の型、進行性などが異なっていることが知られている。遺伝性難聴の原因遺伝子の中には、特徴的な聴力型を示す原因遺伝子が知られている(WFS1遺伝子:低音障害型、TECTA遺伝子:皿型、KCNQ4遺伝子:高音障害型)。これらの遺伝子変異による難聴は、特定の高さの音刺激の受容が障害されることにより生じると考えられるため、蝸牛の回転別に異なる遺伝子が発現して聴覚機能を維持している可能性が考えられた。 そこで本研究では、蝸牛の回転別に発現している遺伝子の詳細を明らかにすることを目的に、8週齢の近交系マウス(C57BL/6)より蝸牛膜迷路を摘出し、得られた蝸牛膜迷路を頂回転、中回転、基底回転の回転別に分割し、Total RNAの抽出を行った。得られたRNAの品質チェックを行ったのちに、次世代シークエンサーを用いてRNA解析を行い、回転別の遺伝子発現パターンおよびAlternative Splicingに関して詳細に検討を行った。また、前年度に引き続き、Long Read型次世代シークエンサーを用いてAlternative Spricing Variantを直接確認した。その結果、回転別に特徴的な発現を示す遺伝子、および回転別に異なるalternative splicing variantを有する遺伝子群を見出すとともに、従来知られていなかった新規のalternative splicing variantを同定することができた。現在論文として報告するための準備を行なっている。
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