研究課題/領域番号 |
17K11323
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
工 穣 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (70312501)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工内耳 / 遺伝子発現 / デキサメタゾン / 残存聴力活用型人工内耳 |
研究実績の概要 |
従来、人工内耳手術では、電極の挿入により内耳機能が失われてしまうと考えられていたが、残存聴力活用型人工内耳(EAS)の登場により、現在残存している低~中音域の聴力をほとんど維持したまま中~高音域へ人工内耳を挿入して使用することが可能となったが、残存聴力を維持したまま人工内耳を行う際にポイントとなるのが、低侵襲手術アプローチと低侵襲電極の使用、ステロイドの局所/全身投与である。残存聴力活用型人工内耳手術時の蝸牛内保護のためのステロイドの投与方法については、これまで様々な研究がなされているが、一つの理想的な投与法として人工内耳電極からステロイドを持続投与する方法があげられる。蝸牛に挿入された人工内耳より、電極近傍あるいは蝸牛全体に長期的かつ局所のみに投与を行うことが可能となれば、前述の長期の蝸牛組織損傷の抑制が可能となると考えられる。 そこで、本研究では内耳に持続的にデキサメタゾンを投与することの影響を明らかにすることを目的に、現在臨床応用へ向けてMed-El社で準備が進められているシリコンから微量のデキサメタゾンが持続的に長期間溶出する電極(マウス、モルモット用)を用いて実験を行った。具体的には、生後8週のマウスおよびモルモットを用い、麻酔下にABR(クリックおよびトーンバースト)にて聴覚閾値を記録し、正常聴力範囲内であることを確認後、耳後部より蝸牛へアプローチし、デキサメタゾン溶出電極を蝸牛内へ留置、コントロールとしては、通常のシリコン電極を対側に留置し、抗菌薬を投与後に覚醒させた。電極の長期間留置による聴覚への影響をみるために、まずは4週、8週で再度麻酔下におき、ABRにて聴覚閾値変化を記録したのち、再び覚醒させて現在長期観察を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、マウス、モルモットを用いて聴力の測定および人工内耳挿入手術を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)デキサメタゾン溶出電極の蝸牛内長期間留置に伴う機能的変化の検討(工、西尾、品川) 平成29年度の続きとして、引き続きデキサメタゾン溶出電極の長期間留置による聴覚への影響をみる。まずは4週、8週でABRにて聴覚閾値変化を記録したマウスについて、その後16週、32週後に再度麻酔下におき、ABRにて同様に聴覚閾値変化を記録する。
(2)デキサメタゾン溶出電極の蝸牛内長期間留置に伴う形態的変化(工、西尾、横田) また、4週、8週、16週、32週にABR検査を実施した個体のうち、n=3は4%パラホルムアルデヒドにて局所および全身灌流固定を行い、側頭骨の組織切片を作成して蝸牛内電極周囲の線維性組織変化や有毛細胞・ラセン神経節の変化を観察する。これにより、長期デキサメタゾン電極留置に伴う蝸牛内組織変化の有無や、蝸牛内組織変化の抑制効果の有無を形態的に明らかにすることができる予定である。
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