研究課題/領域番号 |
17K11325
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 講師 (50335270)
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研究分担者 |
喜多 知子 (嶋知子) 京都大学, 医学研究科, 研究員 (20362519)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 研究員 (50397634)
山本 典生 京都大学, 医学研究科, 講師 (70378644)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | IGF-1 / 蝸牛 / 有毛細胞 / シナプス / 再生 |
研究実績の概要 |
本研究では、インスリン様細胞増殖因子1(IGF1)による急性感音難聴治療研究を発展させ、より幅広い感音難聴に対する創薬研究の基盤形成を目的とし、特にIGF1情報伝達系の蝸牛における役割に注目した研究を行う。平成30年度は、1)マウス蝸牛器官培養での支持細胞への遺伝子導入方法開発として、アデノ随伴ウイルス(AAV)の遺伝子導入効率解析、2)加齢性難聴におけるIGF1情報伝達系の役割解析、3)IGF1による蝸牛求心性シナプス再生解析を行った。AAVによる遺伝子導入に関しては、AAV1-CAG-GFP, AAV2-CAG-GFPについて検討し、AAV1が高い導入効率を示したが、蝸牛支持細胞への導入効率は低く、さらなる検討の必要性があると考えられた。IG1情報伝達系の加齢性難聴における役割解析は、DBA/2JおよびC57BL/6Jの2系統について、加齢性難聴発症前後でのIGF1情報伝達系に関連するmRNA発現変化を調べ、DBA/2Jで有意の変化が認められた。また、DBA2/Jでは、IGF局所投与の加齢性難聴遅延効果が認められ、外有毛細胞および求心性シナプスの保護効果が認められた。以上の結果から、DBA/2Jマウスにおける加齢性難聴の進行には、IGF1情報伝達系が関与していることが明らかとなった。IGF1による蝸牛求心性シナプス再生に関する検討は、マウス蝸牛器官培養を用いて行い、IGF1添加により興奮性アミノ酸曝露により傷害された求心性シナプスが再生することが示された。上記のDBA/2Jマウス加齢性難聴実験結果と合わせ、IGF1が蝸牛求心性シナプスを標的とした感音難聴治療薬として有用であることが期待できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IGF1情報伝達系の感音難聴および蝸牛障害における新たな役割および治療薬としての可能性を示唆する新たな知見が得られ、進捗状況は良好といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Netrin1を含めたIGF1情報伝達系下流分子の役割の解析を行う。さらに、蝸牛内有毛細胞の感覚毛およびリボンシナプスとの関連性、感覚上皮細胞間結合との関連性に関する解析を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、研究を加速させるために、前払い支払い請求を行い、研究解析委託、試薬購入などを行い、計画通りに研究を進捗させた。研究解析費用(委託分)および試薬費用が予定よりも少し低価格で購入できたため、少額の残金が生じた。次年度の論文校閲費および投稿費が必要となることから、その一部として使用する予定とした。
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