研究課題
前年度の研究では、通常のfNIRSの手法を用いてphonological short-term memoryタスク時の脳機能の左右差の検出を試みたが、有意な左右差を検出できなかった。そのため、本年度は①fNIRSの計測手法の改善と②EEGを用いた脳機能の左右差の検出の試みを行った。①fNIRSはfMRIに比べて空間解像度が低いことが欠点とされる。申請者はこの空間解像度の低さを改善するために、プローブの密度を2倍にしたhigh-density array(HD-array)を用いて脳機能評価を行った。予算の問題で両側ともにHD-arrayを用いることができなかったため、左半球の脳機能のみHD-arrayで計測し、空間解像度が改善されるかを検討した。結果、HD-arrayを用いることで、異なるタスク間での脳機能の差をより正確に検出できることが明らかとなった。これは、HD-arrayを用いることで脳機能の左右差を検出できる可能性が高くなることを示唆している。②次に、多チャンネル脳波計を用い、/a/の語音と500Hzの純音を聞いたときの脳波をそれぞれ計測し、BESAを用いて聴覚野ダイポール推定解析を行った。結果、N1に相当する聴覚野の反応は有意な左右差を認めなかったものの、左聴覚野のダイポールモーメントのみ語音と純音の提示条件間で有意な差を認めた。これは、左聴覚野がより言葉に反応しやすい過去の知見と矛盾しないと同時に、多チャンネル脳波計とダイポール推定解析により、聴覚野の機能の左右差を検出できることを示している。
3: やや遅れている
理由当初の計画では、健聴者を対象にfNIRSを用いて脳機能の左右差を検出する方法を確立し、人工内耳装用者に対して検査を開始する予定であった。しかし、健聴者におけるfNIRSの検査方法の至適化に時間を要したと同時に、脳波計を用いた代替方法の確立に時間を要したため、人工内耳装用者に対する検査の開始が遅延した。
方策①HD-arrayを用いることで、fNIRSを用いた脳機能評価の空間解像度を改善できたため、健聴者に対してHD-arrayを用いた脳機能の左右差を検出する方法を確立する。さらに、この方法を人工内耳装用者に応用する。②多チャンネル脳波計と聴覚野ダイポール推定解析の手法を人工内耳装用者に応用し、人工内耳装用者の脳機能の左右差を計測する。さらに、人工内耳術時年齢、失聴期間、装用効果と脳機能の左右差の相関を評価し、人工内耳装用者において脳機能の左右差の発達に影響しうる要因を明らかにする。
理由平成30年度は人工内耳装用者に対する検査が遅延し、検査の参加人数が予定より少なかった。そのため、平成31年度に予定する被験者への謝礼に繰り越したため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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