研究課題/領域番号 |
17K11330
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
宮下 武憲 香川大学, 医学部, 准教授 (60363214)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内耳 / イメージング / 内リンパ嚢 / 血管条 / イオン輸送 / RT-PCR |
研究実績の概要 |
健常では内リンパ水腫が生じないように内リンパ系が調節されている。内リンパ液が過剰になると、難聴やめまいが生じるため、聴力と平衡感覚の維持には内リンパ液の調節がきわめて重要である。この内リンパ液は、蝸牛の血管条で産生され、内リンパ嚢で吸収されると考えられている。これまでに内リンパ嚢においてイオン輸送が内リンパの吸収に重要な働きをしていることを示唆する研究結果を蓄積している。この内リンパの輸送能を制御することができれば、内リンパ水腫を呈するメニエール病などの根本的な治療が可能である。 これまでにも、分子生物学的アプローチとして、laser capture microdissection法を用いてラット内リンパ嚢上皮細胞からmRNAを抽出し、存在が推定されるイオン輸送体、および、その制御因子の発現を調べ、発現していれば免疫染色で内リンパ嚢での局在を調べている。さらに、同手法を用いて、定量化できれば、イオン輸送体の制御について研究が進められるがこれまでは微量であることから成功した報告はなかった。そこで、微量mRNAの新しい抽出法を応用し、これまでは不可能であった内リンパ嚢上皮細胞からのmRNAのリアルタイムPCRによる定量化に成功した。今後、イオン輸送体のアップレギュレーションに関与すると想定される条件でのイオン輸送体mRNAを定量比較することでイオン輸送体の制御について研究を進めていく予定である。 これまでは、本プロジェクトでターゲットの一つとしている内リンパ嚢への薬物投与経路として、経静脈的に投与する全身投与だけであったため、内リンパ嚢上皮細胞からみるとbasal sideからの投与のみ可能であった。投与経路の追加として、系内リンパ経由で薬物を投与するマウスの実験系を新たに開発した。このことで、apical sideからの薬物投与が可能となり、新たなイメージング実験が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子生物学的アプローチとして、laser capture microdissection法を用いてラット内リンパ嚢上皮細胞からmRNAを抽出し、存在が推定されるイオン輸送体、および、その制御因子の発現を調べ、発現していれば免疫染色で内リンパ嚢での局在を調べている。そこで、微量mRNAの新しい抽出法を応用し、これまでは不可能であった内リンパ嚢上皮細胞からのmRNAのリアルタイムPCRによる定量化に成功した。さらに、収率が不安定であったため各ステップを詳細に見直し検討し、実験中のみならず保存や搬送時の条件を細かく再設定することで安定した収率を得られるようになった。 また、これまでは本プロジェクトでターゲットの一つとしている内リンパ嚢への薬物投与経路として、経静脈的に投与する全身投与だけであったため、内リンパ嚢上皮細胞からみるとbasal sideからの投与のみ可能であった。投与経路の追加として、系内リンパ経由で薬物を投与するマウスの実験系を新たに開発した。このことで、apical sideからの薬物投与が可能となり、新たなイメージング実験が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、イメージング技術を用いて、イオン輸送の制御因子として、イオン輸送体の調節因子(インヒビター、アゴニスト等)を投与したときの内リンパ嚢上皮細胞内および血管条辺縁細胞内のイオン動態をリアルタイムで計測することで、制御因子の確定およびその制御因子の制御能を直接測定する予定である。 また、分子生物学的アプローチとして、laser capture microdissection(LCM)法を用いてラット内リンパ嚢上皮細胞からmRNAを抽出し、存在が推定されるイオン輸送体、および、その制御因子の発現を調べ、発現していれば免疫染色で内リンパ嚢での局在を調べる予定である。さらに、イオン輸送体のアップレギュレーションに関与すると想定される条件でのイオン輸送体mRNAを定量比較することでイオン輸送体の制御について研究を進めていく予定である。
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