研究実績の概要 |
MTO1欠失マウスは、細胞核DNA変異が聴覚に及ぼす影響を評価するためには、最適のモデル動物であると考える。しかし、MTO1欠失マウスは胎生致死であるため(未発表データ)、本研究では、Cre-loxPシステムによりMTO1 cKOマウスを作製した。内耳特異的creレポーターをもつPax2-creマウス(Ohyama,development,2008)とMTO1 floxedマウスを交配した。 次にMTO1 cKOマウスの評価を行った。聴性脳幹反応(ABR)は生後30日(P30)、P90、P150、P360の時点で、聴力閾値の測定を行った。電極は関電極を計測耳の乳様突起の皮下に、不関電極を対側耳の乳様突起の皮下に置き、接地電極は頭頂部の皮下に置き、4、8、12、20、32kHzの各周波数における閾値を計測した。形態学的評価は各ステージで蝸牛を摘出し、パラフィン切片を作成し、ヘマトキシリンとエオジンで染色し、光学顕微鏡にて形態評価を行った。また、免疫組織染色は、各ステージで凍結切片を作成し、ラセン神経節を抗Tuj1抗体で免疫蛍光染色し、細胞数カウントを行った。有毛細胞数は、蝸牛を摘出し蝸牛骨壁を削除し、蝸牛軸を除去した後、Phalloidin染色を行い、蝸牛有毛細胞の形態を蛍光顕微鏡で確認し、有毛細胞カウントを行った。 MTO1 cKOマウスの産出に多くの時間を要した。MTO1 cKOマウスでは、コントロールマウスと比較して、早期からの難聴進行を呈し、加齢性難聴モデルとなりうることを示した。H&E染色を行い光学顕微鏡で観察したが、蝸牛形態的には大きな変化は認めなかった。また、有毛細胞とラセン神経節細胞の脱落については、脱落時期に乖離があることがわかった。
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