研究課題/領域番号 |
17K11339
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西村 忠己 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60364072)
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研究分担者 |
細井 裕司 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (80094613)
下倉 良太 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90455428)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 軟骨伝導 / 補聴器 / ハウリング / 外耳道閉鎖症 |
研究実績の概要 |
軟骨伝導補聴器は軟骨の振動を介して音を伝導させる新しい補聴器で、振動で音を伝達するため外耳道閉鎖症などでも有効である。外耳道軟骨の振動により外耳内に音が生成し効率的に音が伝わるが、補聴器にした場合に問題となってくるのがハウリングである。ハウリングが生じると出力を制限する必要があり、十分な効果が発揮されない。ハウリングの原因となる要素は様々であるが、実際の軟骨伝導補聴器を装用している例で検討すると、音漏れが大きい場合(隙間が大きい)に生じやすいこと以外に、振動子の固定がしっかりしていないときや、振動子の表面の凹凸が大きいときに生じやすいことが明らかとなった。軟骨伝導補聴器の装用者の検討結果からは、耳の形状に個人差が大きく、また振動子の大きさが大きくなると出力が落ちて効果が減少することになるため、全体としての対策は難しく、個々の耳で個別に対応していく必要があることが分かった。 外耳道閉鎖症におけるハウリング対策としては個々の耳に合わせた振動子の最適化、すなわちできるだけ凹凸が無く、耳にフィットし、可能な限り大きさが小さい振動子の作成が必要であると考えられた。この問題を解決する方法として、CT画像を用いて耳の形状を3次元構築し、最適な振動子を作製することを試みた。検討の結果振動子のサイズの縮小は可能であったが、表面の形状については印象剤で採型した耳型から作製した振動子の方が優れていた。今後手技的な部分を改良することでよりハウリングが生じず効果の高い補聴器の振動子が作製できる検討していく予定である。 非外耳道閉鎖症については、振動子単体を外耳道内に挿入して使用するが、隙間があり、安定した固定が難しい。これに対応するため新しい形状の振動子を設計し、特許申請中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハウリングの生じる原因とその対象方法について実際の症例での対処と効果より、明らかにすることが可能であった。この結果を基にこれからフィッティングする症例でその効果を明らかにしていくことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
実際の症例でまずハウリングが生じにくい形状の振動子を作製しフィッティングを行う。ハウリングが生じる症例では、これまでに有効であったハウリングを抑制する方法を試す。外耳道閉鎖症では個人差が大きいため、効果がなかった原因について検討し、今後の症例にフィードバックを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ハウリングを生じるメカニズムについて、実際の装用耳で試行錯誤することで推定可能な部分があった。実耳での結果で防止する手法についてある程度明らかにすることができた。このためさまざまな状態のモデルを作る部分が一部省略することができ、その部分で経費を抑えることが可能であった。その抑えた経費については実際のその技術を応用するための実耳で用いる試作器作成や評価に用いる予定である。多くの耳で評価することでより効果を高めると思われるため、国内だけでなく海外での評価についても検討していく予定である。
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