研究課題
小児滲出性中耳炎の難治・遷延例の鑑別診断法を確立することを目的に研究を遂行した。①小児滲出性中耳炎症例について、画像診断(単純レントゲン検査、必要に応じてCTスキャン)、聴覚検査(ワイドバ ンド・ティンパノメトリー検査:WBT、幼児聴力検査、その他の他覚的聴覚検査)による難治例の抽出が可能かどうかを検討したが、これらの検査では、難治例の予測は困難であった。3年前から始まったCOVID-19感染蔓延の影響で、感冒等の流行がほとんど見られなくなったことから、それに引き続いて起きてくる小児の急性中耳炎や副鼻腔炎は著名に症例数が減少した。そのため、症例の蓄積が思う様に伸びずに研究期間を延長した。②鼓膜の光干渉断層撮影(Optical coherence tomography:OCT)は、FDAの認可が下り輸入可能となったので、これをまずは正常被験者を対象に使用して、実際に臨床応用可能かどうかについての検証を行った。前記の理由で小児滲出性中耳炎の難治例・重症例が減少しており、これについての精密な評価は難しかったが、 近年諸外国においては抗菌薬投与が必要となる急性化膿性中耳炎と、慢性化した滲出性中耳炎との鑑別診断法の開発が注目されており、特に鼓膜の光干渉断層撮影(OCT)の有用性を示唆する意見も出てきている。さらにOCTによって、鼓膜の肥厚の程度や中耳腔裏面のバイオフィルム形成などについての情報が得られることから、急性中耳炎と慢性滲出性中耳炎の鑑別だけではなく、滲出性中耳炎の難治・遷延例の鑑別診断、さらには先天性真珠腫生中耳炎、コレステリン中耳炎などとの鑑別が可能となる可能性がある ことがわかった。本研究成果の一部は、小児滲出性中耳炎診療ガイドライン改訂版において、付記「診断技術向上にむけた将来展望」として掲載された。
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Auris Nasus Larynx
巻: 49 ページ: 748-754
10.1016/j.anl.2022.03.017
巻: 50 ページ: 0-0
10.1016/j.anl.2022.12.004