研究実績の概要 |
Tlx3はマウスでは発生の初期(E9)に内耳神経節(cochleovestibular ganglion, Ⅷ)で発現が認められ、耳胞から遊出して内耳神経節を形成する神経前駆細胞にもその発現が認められることが知られている(PNAS USA, 105: 5780 -85, 2008)。その後の検討で、Tlx3は内耳神経細胞へと発生運命の決定した細胞に発現し、Wntシグナル系を介して、知覚性神経細胞を分化・誘導する機能を有していることが明らかとなった(Stem Cells 29: 836-846, 2011)。以上よりTlx3は内耳神経細胞の発生に極めて重要であり、Tlx3は内耳前駆細胞への優れた分化誘導マーカーと考えられる。 そこで本研究では、当初の研究計画に従い、マウスES細胞からの内耳前駆神経細胞への分化誘導法の確立を試みた。具体的にはTlx3遺伝子の翻訳終了点直後にレポーター遺伝子(eGFP)をノックインさせたマウスES細胞を作製した。しかしながらこのノックインES細胞にBMP4やFGF2などを順次添加して内耳系へ分化誘導を試みるも、Tlx3の発現増強を認めず、eGFPの発現増強も認めなかった。現在内耳系へ分化誘導させる条件を変えてTlx3の発現上昇を認めるかどうか検討し、更に次世代シーケンサーを用いた網羅的発現解析により、内耳系へ分化誘導させて時に発現が増大する遺伝子の検討を行っている。この結果、ES細胞にBMP4やFGF2などを順次添加して内耳系へ分化誘導を試みるもTlx3の発現は変化しなかった。そこでNgn1とNgn2に同様のノックイン細胞を用いて検討を行った。
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