これまでにヒト鼻腔上皮細胞株RPMI2650細胞を用いた単純化した鼻腔粘膜モデルを確立している。RPMI2650細胞はヒト正常鼻腔細胞と酷似しているが、正常鼻腔上皮細胞に劣っている点も多くより正常組織の構造・機能に近いモデルの構築が必要とされた。そこで、in vitro の鼻腔粘膜モデルの作成を目指し、ヒト鼻腔上皮初代培養細胞を用いた気相液相界面培養系の構築を行った。PromoCells社より購入した鼻腔上皮初代培養細胞を用いた気相液相界面培養系での単層細胞層の形成では継続培養時にスフェロイド状に増殖し、単層状のシート形成の確立の割合が低く、条件の再検討が必要となった。培養パラメーターの見直しと細胞ロット間の適応差を考慮し、複数ロットを導入し比較検討を行った。RPMI 2650細胞についてもより高度にタイトジャンクションを形成する培養条件が見いだされつつあったが中断を余儀なくされている。一方、プレリミナリーな調査計画として、ヒト鼻腔正常細菌叢形成菌株を収集する計画を策定し、アレルギー疾患、症状、病態との相関について検討した。各種黄色ブドウ球菌病原遺伝子プロファイルの解析を進行させてきた。スーパー抗原活性を有する黄色ブドウ球菌腸管毒B(SEB)は、アレルギー疾患増悪との関連が疑われているが、現在それを裏付ける結果は得られていない。構築した鼻腔上皮粘膜モデルを用いて、鼻腔内常在細菌との相互応答の解析を行っていく計画であったが、試料保存用フリーザーの破損による試料喪失といったアクシデント、さらにコロナウイルス感染症拡大の影響による研究環境の悪化により計画の遂行に多大な支障が生じた。
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