研究課題/領域番号 |
17K11355
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
意元 義政 福井大学, 学術研究院医学研究部門(附属病院部), 助教 (50418703)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鼻茸 / tPA / GPR41 / GPR43 |
研究実績の概要 |
指定難病である好酸球性副鼻腔炎においては、組織内のフィブリン沈着が著明である。この病態の原因の一つは、鼻茸上皮細胞におけるtissue plasminogen activator (tPA)が低下していることである。これまで気道上皮細胞におけるtPAのアゴニストに関する報告はなかった。近年抗炎症作用や抗アレルギー作用を示す短鎖脂肪酸の重要性が注目されており、短鎖脂肪酸が気道上皮細胞でtPA産生を誘導するかを検討し、以下のことを見出した。 ①短鎖脂肪酸の受容体であるG protein-coupled receptor(GPR)41とGPR43がについて、これらが鼻粘膜組織において存在するか、手術にて採取された鼻茸と鈎状突起粘膜を用いて免疫組織化学にて検討した。その結果GPR41とGPR43が鼻粘膜上皮細胞に存在していることを見出した。 ②ヒト正常気道上皮(Normal Human Bronchial Epithelial cells:NHBE)細胞を用いて、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸を作用させ、tPAが誘導されるかを検討したところ、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸がtPA産生を誘導することを見出した。これらの反応において、短鎖脂肪酸によるNHBE細胞のcell viabilityや培地中のpHへの変化がないことも確認した。また培地中に放出されるtPAが活性を有していることが分かった。 ③GPR41とGPR43のシグナル阻害薬および各受容体のsiRNAを用いた実験により、短鎖脂肪酸によるtPAの産生誘導がGPR41とGPR43依存性であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で重要なテーマである、①短鎖脂肪酸の受容体であるGPR41とGPR43が鼻茸上皮細胞で存在こと、②酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸がtPA産生を誘導すること、③tPA産生誘導がGPR41とGPR43依存性であることを見出した。これらの結果は、短鎖脂肪酸受容体の特異的アゴニストにより、鼻茸上皮細胞からtPA産生を誘導できることを示唆している。これまで、好酸球性副鼻腔炎の特効薬はステロイド以外ないため、本研究で見出された結果が、新規治療薬の候補となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後鼻粘膜細胞でもtPA産生誘導が短鎖脂肪酸により生じるか、鼻茸上皮細胞と正常鉤状突起細胞では、短鎖脂肪酸によるtPA産生メカニズムが違うのかを検討する。 鼻茸組織内には好酸球、好塩基球、マクロファージなどの多数の炎症細胞が浸潤しており、好酸球性副鼻腔炎の病態形成に深くかかわっている。これらの細胞にもGPR41やGPR43が発現している。短鎖脂肪酸が鼻茸に浸潤している炎症細胞にどのような影響があるかを検討する。 鼻腔内における短鎖脂肪酸の濃度について、鼻腔洗浄液を高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography: HPLC)法にて測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に伴う試薬及びキットの購入と、成果発表のための旅費に研究費を使用いたしました。当該年度に予定していた実験が順調に行えたため、次年度使用額が生じました。
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