好酸球性副鼻腔炎の病理学的特徴は、鼻茸組織内における多種多様の炎症細胞の浸潤と過剰なフィブリンの沈着である。好酸球性副鼻腔炎は、難治性かつ再発率が高い疾患であるにもかかわらず、そのメカニズムは解明されていない。近年、腸内細菌叢が作る短鎖脂肪酸が、大腸疾患の炎症を抑制している報告が相次いでいる。本研究では、気道上皮細胞での、短鎖脂肪酸によるtissue plasminogen activator(tPA)の産生について検討した。 手術で採取した鼻粘膜組織を用いて、G protein-coupled receptor(GPR)41とGPR43に対する免疫組織化学を行ったところ、鼻粘膜上皮細胞にGPR41とGPR43が発現していることを見出した。また一部の炎症細胞にも発現していることが分かった。 培養気道上皮細胞を短鎖脂肪酸で刺激すると、酢酸、プロピオン酸、酪酸、および吉草酸によりtPAの発現が誘導されることが、mRNA及び上澄に含まれるタンパク量で確認できた。最もtPAを誘導したのはプロピオン酸であった。上澄に放出されるtPAは活性を有すること、短鎖脂肪酸による気道上皮細胞からのtPA発現には培地中のpHの変化や、細胞障害を伴わないことを確認した。短鎖脂肪酸により誘導されるtPAがGPR41とGPR43依存性であるかについて、siRNAとシグナル阻害薬を用いて検討した。その結果短鎖脂肪酸による気道上皮細胞からのtPA発現誘導はGPR41とGPR43依存性であることを見出した。
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