研究課題/領域番号 |
17K11356
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山田 武千代 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (70283182)
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研究分担者 |
齋藤 秀和 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (00791948)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スギ花粉症 / 舌下免疫療法 / 予後予測因子 / バイオマーカー / アレルギー性鼻炎 / 網羅的解析 / サイトカイン / 血漿 |
研究実績の概要 |
アレルギー性鼻炎におけるバイオマーカーの研究は、効果の客観的評価、治療前の予測因子として重要であり、スギ免疫療法長期効果に対する治療前予測・新規候補分子を解析した。網羅的解析では、免疫療法4年目に症状スコアが低い有効群と症状スコア高い無効群分類すると、4年目有効群に治療前血漿濃度が高い分子が46種類、4年目無効群に治療前血漿濃度が高い分子が115種類候補として存在した。4年目有効群な治療前血漿分子は抗酸化作用を有するものが複数存在した。我が国におけるスギ舌下免疫療法中の効果として、IL-10産生制御性T細胞、Th2サイトカイン、Th17サイトカインの変化などが挙げられる。我々が検討した長期舌下免疫療法では、血漿3a、C5a、IL-4、 IL-17A濃度の有意な減少、Apolipoprotein A4は有意な増加が認められた。バイオマーカーの候補である舌下免疫療法4年目のIL-17A濃度と強く相関する治療前血漿分子も存在した。TSLPは気道アレルギー患者のCD34陽性骨髄前駆細胞からのTH2サイトカインの産生を促すが、血漿TSLP濃度も同様に、4年目で、1年目と比較して有意に減少し、1年目の血漿TSLP濃度は4年目の症状スコアと相関し、治療中から長期の効果を予測しうる因子の候補と考えられた。制御性T細胞にはFoxp3陰性でIL-10産生するTr1 細胞が存在し、Tr1 細胞はIL-21を産生する。治療前血漿IL-21濃度は治療後1年目の症状スコアと有意に逆相関し治療前予測因子とも考えられたが、4年目の症状スコアとは相関せず長期予後予測因子の候補とはならなかった。スギ舌下免疫療法の充分な効果が期待されるには3~4年以上治療が必要である。治療効果には個人差があり治療前に長期効果を予測することができれば、医療経済及び患者にとって福音となり、更なる研究が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)スギ舌下免疫療法治療前血清、末梢血単核球を利用し、網羅的な観察を更に継続・並行して長期効果予測分子とバイオマーカーを模索した。今後、2)スクリーニングした分子を用い各種アレルギー担当細胞への(細胞内シグナルを含む)影響を観察する。3)効果予測分子リコンビナント、分子標的siRNAと中和抗体による、免疫療法(-)/(+)花粉症モデルマウス、好酸球性鼻粘膜浮腫性病変モデルマウスへの影響を観察する。4)好酸球性副鼻腔炎の患者鼻茸浮遊細胞を用いて、花粉抗原、効果予測分子リコンビナント、分子を標的としたsiRNAと中和抗体の影響を網羅的に観察する。5)スギ花粉症合併の好酸球性副鼻腔炎術後症例をランダム化しSLITの影響と再発の有無を検討する臨床研究を施行する。6)進捗状況に応じて血漿サンプルを用いた実験、培養細胞実験による機能解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
抗原特異的免疫療法においては3~4年目以降に免疫機能が変化することが知られている。予測分子が判明しアレルギーを抑制する分子であれば、治療前に効果を予測できるばかりでなく、治療抵抗性フェノタイプの症例に対してもリコンビナントが新規治療の候補薬となる。好酸球性副鼻腔炎の大規模研究では末梢血好酸球数と同様にスギ花粉症の関与が判明している。好酸球性副鼻腔炎の患者鼻茸浮遊細胞を用いて花粉抗原の影響を網羅的に観察することは好酸球性副鼻腔炎の発症メカニズムの解明に寄与する可能性があり、好酸球性副鼻腔炎のスギ花粉症合併のフェノタイプを考慮した新規治療に貢献する。世界にも類をみない長期間暴露のスギ花粉症は海外より深い関心が寄せられている。これに対する長期治療の予測は世界にアピールできる画期的なことである。研究内容、独創性においては、国際レベルにおいても最高水準のものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は進んでおり継続的に予算を使用するために次年度使用額としました。
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