研究実績の概要 |
好酸球性副鼻腔炎は難治性上気道炎症であり、手術を行っても再発を起こしやすく、現在、ステロイドが最も有効な治療法である。 好酸球性副鼻腔炎の上皮細胞ではTh2タイプの炎症を誘導するIL-33が上皮細胞に豊富に含有しており(kouzaki, JICR, 2016)、気管支喘息においてはステロイド抵抗性の因子としてIL-33がかかわっていることも示されている(Kabata H, Nat commun, 2013)。また、好酸球性副鼻腔炎の鼻茸中には好中球エラスターゼが豊富に含まれており(Tieu DD, J Allergy Clin Immunol, 2010)、好中球エラスターゼによって切断されたIL-33はより強いTH2型炎症を誘導することが示されている(Lefrançais E, Proc Natl Acad Sci U S A, 2012)。さらに、予備実験において、好酸球性副鼻腔炎の鼻粘膜上皮細胞では、好中球エラスターゼに対して特異的拮抗作用を有する、内因性プロテアーゼインヒビター(Elafin)の発現が低下していることも確認している。これらのことから、ステロイド抵抗性の難治性病態を呈する気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎では、好中球性炎症がその病態に関わっていて、好中球エラスターゼによって切断されたIL-33によってより強いTh2型炎症が引き起こされ、さらに、内因性プロテアーゼインヒビター(Elafin)の発現低下が病態を悪化させている可能性が考えられる。 本研究では、好中球エラスターゼとIL-33、さらに内因性プロテアーゼインヒビターであるElafinの役割に注目して、好酸球性副鼻腔炎の病態を明らかにし、新しい観点から適切な薬物療法が乏しい難治性疾患に対する新たな治療手段の開発を目指す.
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