我々はこれまでの研究で、鼻粘膜より採取した組織幹細胞に着目し、神経再生を目指してきた。この組織幹細胞はin vitroの解析で神経幹細胞の性質を示し、末梢神経麻痺モデルマウスの回復を促進した。顔面神経圧挫麻痺モデルを用いたが、圧迫時間を長くしても2週間で治る程度の麻痺モデルしか作成できないのが問題である。そこで本研究では顔面神経を切断して、より高度な顔面神経障害モデルマウスの治療に応用することを目的とする。顔面神経を切断し、この組織幹細胞を満たした神経再生誘導チューブを吻合し、組織幹細胞の存在により顔面神経麻痺の回復が促進されるか検討した。顔面神経を切断し、離した群では顔面神経の再生は認められなかったが、神経再生誘導チューブを用いた群は、神経を直接吻合した群と比べて劣らない神経再生効果を認めた。その効果を電気生理学的、組織学的にも確認した。側頭骨手術において、顔面神経を切断しなければならない場面は多くないが、本治療法で顔面神経の再生が促進されれば、臨床応用できることが期待される。
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