研究課題/領域番号 |
17K11363
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
太田 伸男 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (20282212)
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研究分担者 |
太田 裕子 羽陽学園短期大学, 幼児教育科, 准教授 (40442016)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 好酸球性中耳炎 / 好酸球性副鼻腔炎 / ETosis / プログラム細胞死 |
研究実績の概要 |
好酸球性中耳炎や好酸球性副鼻腔炎は、気管支喘息の合併や嗅覚障害や聴覚障害を引き起こし患者のQOLを著しく低下させる疾患である。近年、炎症組織で認められる好酸球の脱顆粒を伴う細胞死の本態が、Extracellular trap cell death(ETosis)という新しいプログラム細胞死であることが報告されている。しかし、ETosisの好酸球性副鼻腔炎などの好酸球性炎症における役割についてはまだ十分な検討がなされておらず、この点を明らかにすることが本研究の目的である。極めて粘調性の高い貯留液は、好酸球由来のDNAの塊と考えられる。これらの点を踏まえて、好酸球性副鼻腔炎患者から得られた血液、鼻腔粘液および耳漏のEEtosisの程度と臨床的な重症度との関連性を検討した結果、好酸球性副鼻腔炎および好酸球性中耳炎の鼻腔粘液と中耳潮流駅ではEEtosisが確認された。EEtosisを誘導する因子としてぺリオスチンが関与している可能性が示唆された。 炎症の遷延化の機序としてアポトーシスと異なる新しいプログラム細胞死であるEEtosisが注目されている。プログラム細胞死の一つであるアポトーシスでは、細胞膜は保たれ、核の濃縮があり、表面にEat meサインが発現されていることから貪食細胞に捕捉され炎症は速やかに終息する。一方、新しいプログラム細胞死であるEEtosisでは、好酸球は刺激によって活性化され、細胞膜は破れ、核の崩壊が生じてDNAと組織障害性蛋白であるECPなどが細胞外に放出される。EEtosisではEat meサインは発現されず、組織障害性蛋白を含めた細胞の貪食が進まないため好酸球性炎症の遷延化と重症化が生じるものと推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
治療サンプルは順調に得られており、検討した結果は複数の学会及び論文に報告している。
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今後の研究の推進方策 |
難治性である好酸球性中耳炎及び好酸球性副鼻腔炎から得られた分泌物を用いて、ETosisとの関連を明確にすることが本研究の目的である。また、ETosisを誘導・増悪する分子を同定することも重要なテーマであり、ETosisによって生じるDNA trapsの好酸球性炎症疾患における存在や、その性状について検討を加える予定である。ETosisに関与する分子を明確にすることで、関与する分子を標的とした治療方法の独創的で新規性のある治療戦略の展開が期待される。 好酸球性炎症の病態におけるETosisの役割を明らかにし関与する分子を標的とする治療方法を確立することは、好酸球性副鼻腔炎だけでなく難治性気管支喘息などの致死的な疾患の病態の解明と新しい治療方法への波及効果が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用する抗体の購入が次年度にずれ込んだため次年度使用が生じている。今年度に使用する計画である。
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