研究実績の概要 |
本研究ではARのいまだ未知なる病態の解明と斬新な治療薬の開発を目指し, ARのモデルマウスを用いてGALとそのレセプターであるGAL receptor(GALR)の関与を検討している. これまでに我々は, OVAを用いたARモデルマウスを作成し, コントロールマウスとの比較にて検討を行って来た. まず, GALRはGALR1, 2, 3と三つのsubtypeがあるが, 鼻粘膜のアレルギー炎症においてGALR2が発現することを見出した. また, ウエスタンブロティングにより, GAL, GALR2の発現は, アレルギー炎症において発現量がコントロールとの比較にて有意に増加していた. しかしながら、N数を増加し、発現量を定量化したものを統計学的処理を行うとGALはアレルギー炎症の増加と共に発現が増加傾向にあったが有意差はなかった. またGALR2は重症アレルギーモデルにてdownregulationの傾向にあったが有意差はなかった. つぎにGRPR2 antagonist(GLAR2A)の点鼻効果を重症アレルギー性鼻炎モデルにて検討したところ, コントロールとの比較にて有意に鼻かき, くしゃみ回数を抑制した. GAL, GALR2の局在はそれぞれ鼻粘膜上皮の一部と鼻腺細胞周囲に認めた. GALR2Aの効果の機序の解明のためにGALR2の発現がマスト細胞に認めるか免疫染色にて検討したところ発現していなかった. さらにヒスタミンの直接的鼻腔投与における鼻かき、くしゃみ回数を抑制しなかった. これまでの結果からGAL-GALR2 systemは, マスト細胞が関与しない, もしくはその前の段階でのI型アレルギー免疫応答に関与していることが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
GAL-GALR2 systemが, アレルギー性鼻炎の病態に関与しており, GALR2Aが鼻かき, くしゃみ症状を抑えたという結果は, GALR2Aがアレルギー性鼻炎の治療薬になり得ることが示唆された. しかしながら, 未だGALR2Aの効果発現の機序の解明が進んでおらず今後の課題である. 解析タンパクがなくなるとアレルギー性鼻炎モデルマウスを一から作りなおして, GALR2Aを作用させたものとコントロールに分けての解析になり, 時間を要する。
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