研究実績の概要 |
【背景】近年, Galanin(GAL)はヒトおよびマウスの炎症性サイトカインに対して多形核好中球を感作することが報告され, 免疫調節ペプチドとみなすことが示唆されている. この機能は, ARにおいて重度の炎症を伴う難治性の病態に有効であると考えた. 【対象と方法】ARの感作過程においてのGALやGalanin 受容体2型 (GALR2) の発現変化を確認するためにBALB/c 雌マウスを用いて, ARモデルマウスを作成した. コントロール群, 全身感作群, 軽症ARモデルマウス群, 重症ARモデルマウス群の4群に分類した. 各群の鼻かき回数とくしゃみ回数の計測を行い, 鼻粘膜を採取し, GAL及びGALR2の発現量と局在をRT-PCR, ウエスタンブロット (WB)と蛍光免疫染色 (IHC)にて検討を行った. さらに重症ARモデルマウスにGALR2 拮抗剤 (M871)を投与し, その効果を観察した. その機序を解析するためにKC/GROα/CXCL1, TNFα, IL-5等の分子を解析した. 【結果と考察】我々は初めてGALR2がマウス鼻粘膜に発現することをメッセージレベルにて示した. GAL, GALR2の鼻粘膜の総タンパクレベルでの発現は, コントロール群, 全身感作群, 軽症ARモデルマウス群, 重症ARモデルマウス群の4群における比較検討において, アレルギー炎症の増加に伴って統計学的有意差はなかった.M871を重症ARマウス群に投与した結果, 非投与群に比べて, 鼻かき回数及びくしゃみ回数が有意に抑制した. 抑制の機序を炎症性サイトカイン等を用いて解析したが, 明らかな結果は得られなかった. 結果として, ガラニンシグナルとして感作の進行とともに変化しておらず, ガラニンはARのトリガーになってないかもしれないが, 増悪因子の一つであろうと示唆された.
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