東邦大学倫理委員会承認のもと、通常の臨床手術から得られる検体を用いて行っている。副鼻腔炎の診断で内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した症例と、コントロールとして下垂体手術症例、眼窩壁骨折症例を用いて採取した。鈎状突起から副鼻腔由来上皮細胞(気道細胞)を鼻ポリープから線維芽細胞を培養し検討を行った。副鼻腔炎はウィルス感染を契機に増悪し細菌感染を引き起こす。そのため、ウィルス感染の疑似となるTLR3のリガンドであるPoly I;Cを用いて刺激を行っている。また、好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は、免疫・アレルギー疾患のひとつと考えられている。副鼻腔由来上皮細胞においてPoly I;C 刺激を行うと上清中のTSLPの検出が可能であった。Th2サイトカインだけの刺激では検出されなかった。それにも関わらず、Poly I;Cだけ加えるよりも、Th2サイトカインとPoly I;Cを加えるとTSLP産生量が増加し、特にECRS重症例でその傾向が顕著であった。また、局所(鈎状突起粘膜)のリンパ球についても検討した。ポリープを伴う副鼻腔炎の中で、ECRSと非ECRSで比較した結果、ECRSでは優位にCD4+T細胞/B細胞比が高かった。この結果はECRSの病態にTh2型反応が関与する可能性が示唆された。免疫・アレルギー疾患において線維芽細胞から産生されるペリオスチンも重要であることから、線維芽細胞にPoly I;CまたはRSウィルス液で刺激を加えてペリオスチンのmRNA発現の検討を行ったが、発現量がそれぞれ微弱であったため、比較検討することが難しかった。今後は、倫理申請変更のうえ、通常廃棄する術中洗浄廃液から副鼻腔粘膜における様々な免疫応答を中心とした発現プロファイルを網羅的に解析することを検討する。
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