研究課題/領域番号 |
17K11369
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
志賀 英明 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (80436823)
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研究分担者 |
三輪 高喜 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20229909)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 嗅覚障害 / 予後因子 / 嗅覚刺激療法 / タリウム / ミトコンドリア呼吸鎖阻害薬 |
研究実績の概要 |
特発性嗅覚障害におけるTl-201嗅球移行度の予後因子としての有用性を明らかとした(Shiga et al. Scientific Reports 2017)。金沢医大病院嗅覚外来を受診した特発性嗅覚障害患者のうちオルファクトシンチ臨床試験に参加した成人男女24例を対象とした(女性7例;男性17例;23歳から73歳)。平均追跡期間は11ヶ月であった。治療に一般的に用いられている当帰芍薬散を投与した。嗅覚障害治療効果判定基準に従い治癒または軽快を改善とした。Tl-201嗅球移行度について4.6%未満と4.6%以上の2群に分けると、Tl-201嗅球移行度高値群が有意に予後良好であった。また性別、年齢を加味してTl-201嗅球移行度と患者予後との相関について多変量解析を行なったところ、Tl-201l嗅球移行度は独立した予後因子であることが明らかとなった。その他の予後因子候補である性別、年齢、嗅覚検査結果、嗅球体積、喫煙歴および異嗅症の有無については予後との有意な関連は認めなかった。 また本学耳鼻咽喉科嗅覚外来において標準的治療で改善が得られなかった難治性嗅覚障害で、本研究への参加同意を得られた患者を対象として食べ方の指導による嗅覚刺激療法の臨床研究を行った。食物を口に入れる前に良く嗅ぐよう指導する群(鼻腔法)と良く噛んで味わう食べ方を指導する群(口腔法)とに無作為に振り分けて、自己訓練チェック票を検討した。3ヶ月間の自己訓練施行率に有意差は認めず、両者の方法が継続可能であることが明らかとなった。 非処置マウスを用いた動物実験において、ミトコンドリア呼吸鎖阻害薬のTl-201嗅球移行度に対する影響を検討したところ、Tl-201嗅球移行度が促進することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を進めてきた新規嗅神経分子イメージング法”オルファクトシンチグラフィ”において、パーキンソン病など神経変性疾患が原因である可能性を有する特発性嗅覚障害の予後因子としての臨床的意義が明らかになった。さらに食べ方の指導による嗅覚刺激療法の継続性に問題が無いことが明らかとなった。またタリウムの嗅神経移行の機序の一端が明らかとなった。以上よりおおむね順調に伸展している。
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今後の研究の推進方策 |
原因不明の嗅覚障害例を中心にオルファクトシンチを施行し、パーキンソン病の可能性が示唆された症例は積極的に神経内科と協力し神経学的精査を進めていく。またパーキンソン病の症例についてさらに臨床試験へのエントリーを推進する。嗅神経トレーサーのタリウムの嗅神経移行機序の基礎研究については、動物用SPECT-CTによるラットイメージングも活用して更なる展開を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注を予定していた試薬が海外からの取り寄せとなり、年度内に購入が出来なかったため次年度内に試薬を購入する。
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