• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

パーキンソン病における嗅覚障害の分子イメージング研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K11369
研究機関金沢医科大学

研究代表者

志賀 英明  金沢医科大学, 医学部, 准教授 (80436823)

研究分担者 三輪 高喜  金沢医科大学, 医学部, 教授 (20229909)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードドーパミン作動性ニューロン / 嗅球 / ロテノン / パーキンソン病 / タリウム / オルファクトシンチ / SPECT-CT
研究実績の概要

経鼻投与により嗅球ドーパミン作動性細胞の障害が報告されている農薬の、ミトコンドリア呼吸鎖阻害剤ロテノンを用いた動物実験により、経鼻投与後のタリウムー201嗅球移行率と嗅球内ドーパミン作動性細胞障害との関連を検討した。タリウムー201とロテノンを同時に経鼻投与したマウスでは、タリウム―201と1%DMSO液を同じく投与したコントロールマウスより、タリウムー201嗅球移行率が著明に増加することを明らかとした。ラットを対象としたSPECT-CTによる生体内イメージングでも、ロテノン経鼻投与によるタリウムー201嗅球移行率の著明な増加を明らかとした。マウス嗅球組織の糸球体層における、ドーパミン作動性細胞マーカー“チロシン水酸化酵素”発現を免疫組織化学染色によって検討したところ、コントロールマウスと比較し、ロテノン経鼻マウスでの著明な低下が明らかとなった。嗅球糸球体層のドーパミン作動性細胞は傍糸球体細胞であり、嗅細胞と僧帽細胞とのシナプス連絡を抑制することが知られている。本研究の結果より傍糸球体細胞障害の状態では経鼻投与後のタリウムー201嗅球移行率は高まると考えられた。
パーキンソン病症例の剖検検体を対象とした過去の他施設からの研究報告からは、嗅球傍糸球体細胞の発現増加が明らかとなっており、パーキンソン病症例に対してオルファクトシンチを施行した場合、我々の基礎研究の結果からはタリウムー201嗅球移行率の低下が予想される。一方で本学のオルファクトシンチ臨床試験において、農薬散布の職業歴を有する特発性嗅覚障害例で、健常者と比較してタリウムー201嗅球移行率の異常な高値を認めた症例が存在した。以上より、特発性パーキンソン病とロテノンなどの農薬吸入が原因と考えられる薬剤性パーキンソン二ズムとの鑑別診断にオルファクトシンチが有用である可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

動物実験については計画通り進行しており、成果の一部を学会や論文で発表した。パーキンソン病症例を中心としたオルファクトシンチ臨床試験も順次進行中である。また平成30年度において臨床試験審査委員会より認定を受け次年度以降の臨床試験継続が可能となった。食べ方の指導による嗅覚障害リハビリテーションの臨床試験も継続している。

今後の研究の推進方策

嗅細胞膜電流に対する嗅球傍糸球体細胞障害の影響を明らかとするため、ロテノン経鼻投与後のマウス嗅細胞パッチクランプによる電気生理学的検討を行う。またパーキンソン病症例を中心としたオルファクトシンチ臨床試験の症例数をさらに集積する。食べ方の指導による嗅覚障害リハビリテーションの臨床試験も継続する。

次年度使用額が生じた理由

臨床研究法にもとづく臨床研究審査委員会の認可を待つ期間、予定していたオルファクトシンチ臨床試験を行えなかったため当該予算を次年度に繰り越した。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 嗅覚検査の動向 基準嗅力検査から分子イメージングまで2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明, 三輪高喜
    • 雑誌名

      日本耳鼻咽喉科学会会報

      巻: 121 ページ: 1329-1335

    • DOI

      10.3950/jibiinkoka.121.1329

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 嗅神経性嗅覚障害の病態解明と治療への応用2018

    • 著者名/発表者名
      山田健太郎、志賀英明, 能田拓也、張田雅之、二宮英明、三輪高喜
    • 雑誌名

      日本鼻科学会会誌

      巻: 57 ページ: 83-86

    • DOI

      10.7248/jjrhi.57.83

  • [雑誌論文] 『わかりやすい感覚器疾患』IV. 感覚器疾患の検査法 嗅覚同定検査2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明
    • 雑誌名

      日本医師会雑誌

      巻: 147 ページ: 224-225

  • [雑誌論文] パーキンソン病の末梢病変の検出 ー嗅覚研究からー2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明, 三輪高喜
    • 雑誌名

      別冊BIO Clinica 慢性炎症と疾患

      巻: 7 ページ: 142-144

  • [雑誌論文] 新規分子イメージング“オルファクトシンチグラフィ”のパーキンソン病性嗅覚障害への応用2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明, 三輪高喜
    • 雑誌名

      Medical Science Digest

      巻: 44 ページ: 2-4

  • [雑誌論文] タリウム分子イメージングによる嗅神経シナプスの評価2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明, 三輪高喜
    • 雑誌名

      細胞

      巻: 50 ページ: 759-761

  • [学会発表] The change of nasal thallium transport with modulation of olfactory bulb interneuron.2018

    • 著者名/発表者名
      Shiga H, Washiyama K, Kumai M, Miwa T.
    • 学会等名
      London Rhinology 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Gender differences and influences to olfactory nerve regeneration by ovariectomy in mice.2018

    • 著者名/発表者名
      Yamada K, Kumai M, Ishikura T, Nakamura Y, Noda T, Ninomiya H, Shiga H, Miwa T.
    • 学会等名
      London Rhinology 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] 嗅覚検査と画像診断 国内外の動向2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明
    • 学会等名
      第119回日本耳鼻咽喉科学会 ランチョンセミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] Modulation of olfactory bulb interneurons accelerated thallium-201 migration to olfactory bulb.2018

    • 著者名/発表者名
      Shiga H, Washiyama K, Kumai M, Miwa T.
    • 学会等名
      第119回日本耳鼻咽喉科学会International Session
  • [学会発表] 嗅神経性嗅覚障害における食事を利用した嗅覚刺激療法の比較研究2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明, 經田香織, 山﨑憲子, 岡本一宏, 伊崎由絵, 影近謙治, 三輪高喜
    • 学会等名
      第57回日本鼻科学会
  • [学会発表] 閉経モデルマウスにおける嗅上皮再生障害の機序2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明, 山田健太郎, 能田拓也, 石倉友子, 二宮英明, 坂田ひとみ, 島田ひろき, 八田稔久, 三輪高喜
    • 学会等名
      第34回日本耳鼻咽喉科漢方研究会
  • [学会発表] オルファクトシンチトレーサーの嗅球移行機序2018

    • 著者名/発表者名
      志賀英明, 鷲山幸信, 若林大志, 廣正 智, 瀧 淳一, 絹谷清剛, 三輪高喜
    • 学会等名
      日本味と匂学会第52回大会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi