研究課題
パーキンソン病を含めた嗅覚障害患者における嗅球体積の減少における、嗅球傍糸球体細胞からの抑制性入力減少による嗅覚疲労増強の可能性を明らかとする目的で、点鼻により嗅細胞を障害することなく嗅球傍糸球体細胞を障害するミトコンドリア呼吸鎖抑制剤のロテノンを用いて、嗅球傍糸球体細胞減少時の嗅細胞活動電位の変化の有無を検討した。麻酔鎮静下に側臥位で8週齢のICR雄マウスの左鼻孔にロテノンを点鼻し、3時間後に安楽死させ頭部を解剖した。嗅上皮粘膜を採取しパッチクランプで嗅細胞活動電位を測定した。その結果、ロテノン点鼻側で嗅細胞の再分極遅延と活動電位数の有意な減少を認めた。上記の研究結果は第15回日本台湾耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(令和元年12月6日~7日、福岡市)で発表し現在国際誌に投稿中である。タリウム-201嗅神経イメージング(オルファクトシンチグラフィ)の加齢性嗅覚障害診断における有用性を明らかとする目的で、本学嗅覚外来の受診者でオルファクトシンチグラフィを施行した成人男女(男性12例、女性18例)を対象に以下について検討した。加齢性嗅覚障害(基礎疾患にパーキンソン病関連疾患または軽度認知障害)と、外傷性嗅覚障害および感冒後嗅覚障害とで比較、右側の嗅上皮タリウム集積度とタリウム嗅球移行度を測定した。MRI画像による右側嗅球体積推測値、および基準嗅力検査右側平均域値(検知、認知)についても検討した。その結果、加齢性嗅覚障害と比較し、外傷性および感冒後ともに嗅上皮タリウム集積度の著明な低下を認めた。一方で、タリウム嗅球移行度と嗅球体積には有意差を認めなかった。基準嗅力検査の平均検知域値で、加齢性嗅覚障害と比較し、外傷性で著明な上昇を認めたが感冒後とは有意差を認めなかった。基準嗅力検査の平均認知域値には有意差を認めなかった。
3: やや遅れている
令和2年初頭からのCOVID-19感染拡大に伴い、感染予防の観点から新規患者での鼻内診察が困難となり、オルファクトシンチグラフィの臨床試験へのエントリーが中断している状態であるため。
パーキンソン病を中心とする加齢性嗅覚障害を対象としたオルファクトシンチグラフィの臨床試験については、令和元年度までの症例を中心として解析を進め、令和2年度下半期に開催予定である学会等で発表を予定している。COVID-19終息後に臨床試験を再開し、論文発表を視野に入れている。
臨床試験に伴う物品費の確保に加え、最終年度での国際学会での発表、論文投稿などの支出の増加なども見込まれたことにより、次年度使用額が生じた。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件)
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