研究課題/領域番号 |
17K11374
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
近松 一朗 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30301378)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / 癌関連線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
がん微小環境において間質細胞、特に癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast: CAFs)は癌の増殖能、浸潤能、転移能に加えて、抗腫瘍免疫応答の抑制に大きく寄与していることがわかっている。我々は、これまでにCAFsと非癌部からの線維芽細胞のペアについて遺伝子発現を網羅的に解析し、AKT3という分子がCAFsで高発現しており、この分子は癌細胞にも発現していることを明らかにしてきた。 昨年は頭頸部癌の切除標本において、AKT3分子の免疫染色を行った。その結果、癌細胞においてAKT3は、進行症例やCAFsの浸潤が多い症例で高発現していることがわかった。また、癌細胞及びCAFsにおいて、AKT3高発現症例の予後は不良であることもわかった。このようにAKT3分子は癌細胞とCAFsに共通して発現しているのみならず、癌の悪性形質維持に直接的、間接的に関わっていることが示唆された。 本年は、頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いて、AKT3をノックアウトすることで癌細胞がどのように変化するのかを解析した。 AKT3が高発現している舌癌由来のHSC-3細胞株を用いて、AKT3をshRNAによってノックアウトした。AKT3分子の発現低下はフローサイトメトリーにて確認した。AKT3 knockdown細胞株は、その生存率が有意に低下しており、これはアポトーシスがより誘導されることによるものとわかった。また、AKT3 knockdown細胞株は、親株に比べてIL-1β、IL-6、IL-8、TGF-β、PD-L1、PD-L2の発現が低下していた。これらの癌細胞を使ってT細胞増殖能抑制試験を行ったところ、AKT3 knockdown癌細胞ではT細胞抑制能が阻害されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CAFsと非癌部からの線維芽細胞による網羅的遺伝子解析から、key moleculeであるAKT3を同定し、臨床因子との関係を明らかにしたのちに、AKT3分子の癌細胞における機能について解析ができた。 AKT3をknockdownすることで、癌細胞は増殖抑制、サイトカイン産生能低下、そして免疫抑制能の低下を認めたことより、癌細胞の増殖のみならず悪性度の維持にも関与していることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
AKT3分子の癌細胞における機能解析に引き続き、もう一つの標的であるCAFsについてもAKT3をknockdownして、その機能がどのように変化するのかを親株と比較解析する。 癌細胞と同様に、癌組織標本から継代されたCAFsを用いて、細胞増殖能、サイトカイン産生能、T細胞抑制能について評価をする予定である。 また、AKT inhibitorの薬剤を作用させることで、癌細胞及びCAFsがどのように変化するのかを観察する。
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