研究課題/領域番号 |
17K11377
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤巻 葉子 東京大学, 医学部附属病院, 登録診療員 (80462894)
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研究分担者 |
近藤 健二 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40334370)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生医療 / G-CSF / 顔面神経麻痺 / 神経再生促進 / 表情筋再生促進 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、G-CSFによる顔面神経再生促進効果の検証である。ラットを用いて顔面神経傷害モデルを作成後、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor、以下G-CSF)製剤を投与し、G-CSFによる神経再生促進効果を検証し、そのメカニズムを探究し、さらに臨床応用に向けての最適な投与方法、投与量、投与期間を検討する。 我々はラットの顔面神経部分切除または切断縫合後のG-CSFによる神経再生促進効果について検討してきた。そして神経傷害から3か月後において、顔面神経部分切除群より切断縫合群で回復が早いこと、また、G-CSF投与群では視診上および筋電図上でコントロール群に比較して回復が早いことを確認した。これに引き続き、今年度は主に、機能学的に比較したグループ間で組織学的にはどのような差異が生じているのかを検討した。 表情筋の萎縮からの回復について観察、検討した。臨床上、神経傷害が重度であると支配筋の萎縮が想定され、実際に著明に萎縮する症例を認めるが、神経傷害が重度であっても機能は別として筋の萎縮は著明でない症例もある。顔面神経が完全に断裂されるとどれ程筋萎縮が起こるのか、そして、顔面神経部分切除群、神経切断後縫合群、さらにG-CSF投与群で、表情筋の萎縮からの回復に差があるのかを比較した。これにより、外傷や手術による神経断裂時に筋委縮に対して施行すべき処置を検討する一助になり得る。今回は眼輪筋と口輪筋について神経傷害から12週後の筋萎縮からの回復の様子を観察した。結果、神経部分切除群では処置から12週後も筋委縮は著明であり、切断後縫合群、さらにはG-CSF投与群では非断裂側と比較して筋萎縮は神経部分切除群ほど著明ではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は主に神経への傷害が筋に及ぼす影響とG-CSF投与の再生促進効果について検討してきた。しかし、G-CSFの再生促進効果の評価を行う上で、筋委縮からの回復が神経再生によるのか、あるいは筋細胞自体に対するG-CSFの直接的再生促進効果もあるのか否か検証が必要であった。これを頭頚部の筋で検証中であり、それらの実験等にも時間を費やしたため、進捗状況は当初の計画よりやや遅れている。しかし、これらの実験の結果は今後の本研究の考察をまとめる上で必須であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.組織学的評価:筋委縮からの回復の組織学的評価に続き、神経組織再生の程度について免疫染色等により組織学的に評価し、G-CSF投与群とコントロール群間で比較する。2.G-CSFによる顔面神経再生促進のメカニズムの解明:傷害部位より末梢の再生神経、および顔面神経核内の運動細胞におけるG-CSF受容体発現の有無や血管新生の程度について蛍光免疫染色やRT-PCRを用いて評価する。また、G-CSFの骨髄細胞動員作用により神経栄養因子が増殖するか否かをRT-PCRを用いて評価する。3.G-CSFの投与経路の検討:我々はG-CSFの投与経路として背部皮下に投与し、結果、全身投与でコントロール群に比し、有意に回復が早いことを確認した。もし傷害局所にG-CSFを投与したら、より早く機能が回復するか否か、局所投与モデルを作成して実験を行い、全身投与モデルと比較検討する。4.G-CSFの最適な投与量、投与期間の検討:我々の行ってきた実験でのG-CSF投与量・投与期間を軸に、より少量または短期間で効果を発揮できるかどうか、またより多量投与では結果や副作用の発現にどのような差異が生じるかを比較検討し、最適な投与量を求める。5.長期経過の評価:顔面神経切断縫合後、6か月後での評価を行い、初期治療でG-CSFを投与することが、長期経過に影響を及ぼすか否かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画よりやや遅れ気味であるため、上記の通り、次年度使用額が生じた。今後、研究計画に従って研究を続行すること、および学会発表や論文発表のため、引き続き翌年度分の助成金と併せて使用させていただく予定である。
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