本研究の目的は、G-CSFによる顔面神経再生促進効果の検証である。ラットを用いて顔面神経傷害モデルを作成後、顆粒球コロニー刺激因子 (Granulocyte Colony Stimulating Factor、以下G-CSF)製剤を投与し、G-CSFによる神経再生促進効果を検証し、そのメカニズムを探究し、臨床応用に向けての最適な投与方法、投与量、投与期間の検証を目指している。 我々はラットを用いて、顔面神経部分切除群、切断縫合群、切断縫合2週後にG-CSFを投与する群、直後に投与する群を作成し、神経再生促進効果について検討した。そして神経傷害から12週後に、顔面の動き、筋電図(CMAPの振幅、ENoG)で機能回復の程度を評価した。その結果、顔面神経部分切除群より切断縫合群で回復が早いこと、さらにG-CSF投与群ではコントロール群に比較してより回復が早いこと、さらに、G-CSFを切断縫合術直後に投与した群では、2週後に投与開始した群より機能回復が早いことを確認した。ただし、2週遅れてG-CSFを投与してもコントロール群より有意に回復が早いことも分かった。 次に、機能学的評価に続き、組織学的評価を行った。神経傷害から12週後に組織を採取した。まず、表情筋(眼輪筋と上唇挙筋)の萎縮からの回復の程度を各郡で観察・比較した。結果、神経部分切除群では処置から12週後も筋委縮は著明であったが、切断縫合群、切断縫合後G-CSF投与群では神経部分切除群に比して萎縮からの回復は明らかで、特にG-CSF投与群では回復が顕著であった。次に、神経組織再生について免疫染色により評価した。再生した髄鞘の直径を計測し、各群間で比較した。結果は上記の機能的評価と相関していた。さらに、傷害部位より末梢の再生神経、および顔面神経核内の運動細胞におけるG-CSF受容体発現を蛍光免疫染色により確認した。
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