研究実績の概要 |
声帯麻痺に対する既存の治療法の限界の一因となっている、声帯筋の萎縮に対する治療法の確立のため、麻痺声帯の筋萎縮に対するbFGFの改善効果を検討した。 ラットの左反回神経を切断し、声帯麻痺モデルを作成した。 麻痺後1か月目にbFGFを単回注入し、Day1, 7, 14, 28において声帯筋の萎縮程度を確認した。bFGFのdoseとして200μg(低用量)および2000μg(高用量)を、またcontrolとして生食を用いた。その結果高用量群ではcontrol群と比較し、Day28で声帯萎縮の有意な改善がみられたが、低用量群では有意な改善を認めなかった。機序の解明のため、筋衛生細胞のマーカーとしてPax7、筋芽細胞のマーカーとしてMyoDの発現をDay1, 3, 7, 14, 28において経時的に解析した。Day1でPax7+筋衛星細胞が増殖し、Day3,7でMyoD+筋芽細胞が増大する様子がみられ、bFGF投与により筋衛生細胞の増殖、分化が生じ、筋萎縮の再生効果がえられたと推定した。免疫染色で確認したPax7, MyoDの発現について、RT-PCRを用いて検証したが、信頼に値するデータが得られなかった。 さらに、声帯麻痺による筋萎縮に対するbFGFの早期投与効果について検討した。声帯麻痺モデル作成一日目にbFGFを注射し、Day1, 7, 14, 28において声帯筋の萎縮程度を確認した。bFGFのdoseとして200μg(低用量)および2000μg(高用量)を、またcontrolとして生食を用いた。Day28において、2000μg投与群では有意に筋萎縮が予防されていた。また、Pax7+筋衛星細胞はday1、そしてMyoD+筋芽細胞はDay7をピークに発現数が多く、それぞれで高用量群とcontrol群の間で有意差を認めた。 現在、bFGFの神経再生の作用についても検証中である。
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