研究課題
基盤研究(C)
マウス声帯の物理的損傷後のマクロファージの発現を検討した。正常声帯では粘膜固有層浅層に組織常在マクロファージを認めたが、損傷後は徐々に増加し3日目に最多となり、粘膜固有層全層に分布した。損傷後初期にはiNOS陽性マクロファージ(M1-like)が、正常声帯および損傷後後期ではCD206陽性マクロファージ(M2-like)がそれぞれ優位であることが確認された。さらに、線維化に関わるTGFβ1と Arginase1の発現は損傷後3日目に増加していた。声帯損傷後にマクロファージの分化誘導効果を有するPPARγアゴニストを経口投与し線維化抑制を試みたが、線維化軽減効果は確認できなかった。
喉頭科学
炎症や外傷後に生じる声帯の線維化病変は難治性の音声障害をきたすため、患者にとって精神的にも社会的にも大きなハンディキャップとなるが、確立された治療法はなかった。本研究により、声帯の線維化過程においてマクロファージは比較的早期に関与している可能性が示唆された。これまでは線維芽細胞が治療法開発のターゲットとされてきたが、今後、マクロファージをターゲットとした治療法開発につながる可能性がある。