研究課題/領域番号 |
17K11387
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
近藤 英司 徳島大学, 病院, 助教 (50770434)
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研究分担者 |
武田 憲昭 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (30206982)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カプサイシン / 嚥下障害 / 嚥下性肺炎 / 誤嚥性肺炎 / 外耳道刺激 / 咳反射 / サブスタンスP |
研究実績の概要 |
高齢者の嚥下性肺炎が急増し、誤嚥を予防するために嚥下訓練法が行われているがエビデンスは限られている。降圧剤であるACE阻害薬は、副作用である咳反射の亢進により誤嚥を防止し嚥下性肺炎の罹患率を減少させる。われわれは、カプサイシン軟膏による外耳道刺激が嚥下障害患者の咳反射を亢進させ嚥下機能を改善させることを世界で初めて報告した。本研究では、カプサイシン軟膏による外耳道刺激のメカニズムの解明と、嚥下性肺炎の罹患率に与える影響を検討する。その成果により、私たちは誤嚥の危険性がない安全で新しい嚥下障害の治療法としてカプサイシン軟膏による外耳道刺激の臨床応用をめざし、超高齢化社会のニーズに応えたいと考えている。 カプサイシン軟膏による外耳道への刺激は、カプサイシンが迷走神経耳介枝であるアーノルド神経に発現するカプサイシン受容体TRPV1を活性化し、神経の軸索反射を介して咽喉頭粘膜へサブスタンスPを遊離し嚥下障害患者の咳反射を亢進させて嚥下機能を改善すると考えられている。平成30年度の研究実績は、健常人の外耳道をカプサイシン軟膏で刺激すると、外耳道刺激前と比較し口腔内の唾液や咽喉頭粘膜からの喀痰中に含まれるサブスタンスPが有意に上昇することが明らかになった。また、療養型施設において嚥下性肺炎既往のある寝たきりの高齢認知症患者29名に対し6ヵ月間のカプサイシン軟膏による外耳道刺激を行うと、外耳道刺激後6ヵ月間の肺炎罹患回数は外耳道刺激前6ヵ月間と比較し有意に低下し、嚥下障害患者への肺炎予防効果が示唆された。また、介入が困難になる有害事象は認めず、カプサイシン軟膏による外耳道刺激の安全性が示された。 現在、実用化に向けてカプサイシン軟膏による外耳道刺激の肺炎予防効果についてのプラセボ対照無作為化臨床試験を行っている。
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