研究実績の概要 |
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)関連頭頸部癌に対する新たな治療戦略として樹状細胞(以下DC)ワクチン治療開発を目的に研究を行った。抗原特異的なDCワクチンの作製に、細胞性免疫応答(細胞障害性Tリンパ球;CTLによる)の重要因子であるヒト適合抗原(以下HLA)として日本人に最多のHLA A*2402陽性者を対象に、適合する血液ドナーを探索し、現在まで目的とする適合者として健常ボランティア2例(全7例中)を抽出した。試験管培養下のワクチン作製方法として、Miltenyi社の磁気ビーズを用いたPositive selection法により、CD14陽性細胞およびCD8陽性細胞(CTL分画)を各分離し、各細胞にはIL-2、IL-4/GM-CSFやその他サイトカイン(TNFα,IL-1β,IL-6,PGE2)の刺激下に維持培養し、DCワクチンと細胞障害性リンパ球の増殖を誘導した。また、HPV関連癌で恒常的に発現が見込まれるHPVのE6,E7蛋白を標的として、過去の文献報告から既に同定されているHLA A24拘束性をもつペプチド配列(計6種)につき人工合成し、これを各々DCおよびCD8陽性細胞に曝露することで抗原特異的DCワクチンおよびCTLを作製した。さらに、これらの免疫細胞をHLA A*2402陽性頭頸部癌細胞株(HSC4細胞)とともに混合培養し、癌細胞への影響を細胞障害性試験にて解析した。その結果、HPVE6,E7のHLA*A2402拘束性ペプチド6種類のうち、E6(49-57)およびE6(98-106)の2種のペプチドで刺激したDCワクチンおよびCTLにおいて、HSC4細胞に対する有効性(細胞障害活性)が示唆された。しかし、免疫細胞の最適な培養維持の方法・条件の設定や癌細胞のみでの定量的な細胞障害活性の解析は一部達成されず課題が残った。
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