研究課題/領域番号 |
17K11394
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
室野 重之 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (20345622)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒトパピローマウイルス / 中咽頭癌 / 転移 / 上皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)E5蛋白が上皮間葉転換を誘導し転移能を亢進するとの仮説の検証を試みた。 平成30年度は、PART I:「HPV E5発現ベクター作成と形質導入による上皮間葉転換の検証」に着手した。Epstein-Barrウイルスの癌蛋白であるLMP1により上皮間葉転換が誘導される気道上皮を見出しており、同細胞にHPV E5を形質導入する予定としてHPV E5蛋白発現プラスミド作成を試みたが、本研究年度中に同プラスミドの作成には至らなかった。同プラスミドの作成は本研究の遂行に不可避なものであり、引き続き尽力していく。 また、PART III:「HPV関連および非関連中咽頭癌組織における転移関連因子の発現および上皮間葉転換」についても並行して実施することとした。本研究年度は、前年度に引き続き、中咽頭癌におけるp16免疫染色とGP5+/GP6+プライマーを用いたPCRによるHPV DNAの検出を行い、HPV関連の有無を確認した。HPV関連中咽頭癌の予後不良因子として、被膜外浸潤を画像で表しているmatted nodesと呼ばれるリンパ節の存在が遠隔転移と関連することが判明した。さらに被膜外浸潤を生じる機序について検討を進めていく。 一方、PART II:「HPV E5形質導入による転移関連因子の発現変化とその機能の検証と関与するシグナル伝達路 の解明」に関連し、HPV E5そのものの機能を見たものではないが、HPV16陽性子宮頸癌細胞であるCaski細胞を用いてwound assayによる細胞遊走能の評価を行った。プレリミナリーなデータでは、PART IIでの候補薬剤の一つと考えているバルプロ酸で細胞を処理すると遊走能が亢進する印象であった。当初想定した結果とは異なるものであり、さらなる検証が必要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度に予定していたPART I:「HPV E5発現ベクター作成と形質導入による上皮間葉転換の検証」において、モデルとなる上皮細胞を見出したものの、E5蛋白発現プラスミドの作成には至らなかった。 平成30年度に予定していたPART III:「HPV関連および非関連中咽頭癌組織における転移関連因子の発現および上皮間葉転換」については並行して実施した。本研究年度は、中咽頭癌におけるp16免疫染色とPCRによるHPV DNAの検出を行い、HPV関連の有無を確認し、臨床背景因子との検討によりmatted nodesが遠隔転移に関連することを見出したが、転移関連因子の発現や上皮間葉転換についての検証には至らなかった。 上記により、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度はHPV E5蛋白発現プラスミドを作成し、PART I:「HPV E5発現ベクター作成と形質導入による上皮間葉転換の検証」を加速的に実施するとともに、PART II:「HPV E5形質導入による転移関連因子の発現変化とその機能の検証と関与するシグナル伝達路の解明」に注力する。さらに、PART III:「HPV関連および非 関連中咽頭癌組織における転移関連因子の発現および上皮間葉転換」においても、転移関連因子や上皮間葉転換に関わる因子の免疫染色を実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度未使用額が691,835円あり、今年度交付分とあわせて使用したため若干の次年度使用額を生じた。次年度交付分に占める割合は小さく、概ね予定のとおりに進めていくことが可能である。
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