頭頸部領域に発生する悪性腫瘍の90%以上が扁平上皮癌であり、唾液腺癌の頻度は低い。しかし唾液腺癌に対する化学療法、放射線療法の効果は十分でなく、現在有効と示されている治療法は手術療法のみであり、新たな治療法の開発が必要とされている。我々は以前、頭頸部扁平上皮癌へのHF10の抗腫瘍効果を示した。唾液腺癌も頭頸部扁平上皮癌と同様に腫瘍内治療が可能な腫瘍であり、HF10が新規治療法の選択肢となる可能性が十分考えられる。しかし、頭頸部非扁平上皮癌への腫瘍溶解ウイルス療法についての報告は存在しない。そこで、今回は腫瘍溶解ウイルス療法を用いた唾液腺癌に対する新規治療法を開発した。ヒト顎下腺癌細胞株、マウス顎下腺癌細胞株、顎下腺癌由来初代培養株を用意し、腫瘍溶解ウイルスHF10の殺細胞効果が認められた。また、耳下腺癌モデルマウスを作成し、5-FUのプロドラッグであるS-1を経口投与し、その後HF10を投与したところ、併用療法で最も顕著な抗腫瘍効果を認めた。腫瘍溶解ウイルス療法が唾液腺癌の新しい治療選択肢となりうる可能性が示唆された。
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