令和4年度には、高解像度マノメトリー(High-Resolution Manometry: HRM)にて記録されたデジタルデータ(圧情報、時間情報)から、咽頭内圧(軟口蓋部・舌根部・下咽頭部の最大嚥下圧、嚥下圧の時間幅、 最大嚥下圧の伝搬速度)、食道入口内圧(安静時静止圧値と、弛緩時間および高圧帯の幅)、食道内圧(最大嚥下圧、嚥下圧の時間幅、最大嚥下圧の伝搬速度) と、嚥下圧値の積算による食塊駆出力も算出した。一方、同一対象に実施した嚥下造影検査結果を、Modified Barium Swallow Impairment Tool (MBSImp) に従ってスコア化し、上記HRMのデータと対比を行い、統計学的検討を行った。さらに、嚥下造影検査所見からpenetration-aspiration scale、喉頭挙上時間、X側面像における舌骨・喉頭の位置(安静時の喉頭位)、喉頭挙上距離、食道入口部開大前後径、喉頭挙上遅延時間を算出してHRMのデータと対比を行ない嚥下内視鏡・圧検査の精度と信頼性を確認した。そして本研究の成果の一部を日本気管食道科学会のシンポジウムにおいて発表した。 研究期間全体を通じて、健常人14例と嚥下障害患者60例に対して嚥下内視鏡・圧検査を、一件の有害事象も無く実施できた。嚥下圧センサーは咽頭収縮や食道蠕動の妨げにはならないことも確認した。健常人14例のデータから高解像度マノメトリー(High-Resolution Manometry: HRM)の評価項目の選定を行い、さらに基準検査である嚥下造影検査の所見と比較して、嚥下内視鏡・圧検査における各項目の感度及び特異度からその信頼性を確認できた。嚥下障害患者60例に対しても安全に嚥下内視鏡・圧検査を実施することが可能であり、現在の標準検査である嚥下造影検査の代替検査とすることが可能であると結論した。
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