研究実績の概要 |
研究期間全体で、咽喉頭乳頭腫43名の患者に合計87手術(日帰り手術55件、全身麻酔下手術33件)を施行した。本研究では、複数回の手術が必要な患者にとって、低侵襲かつ日帰りで施術可能なグリーンレーザーを用いた手術(Green Laser Photocoagulation, GFP)に注目して解析を行った。 その結果、GRPにより疾患の重症度を示すDerkayスコアは有意に軽快し、さらに手術を複数回繰り返した全症例で、手術のたびに重症度が段階的に軽快していることがわかった。また、声帯に病変を認めた症例では、手術により発声器官に外科的侵襲を加えざるを得ないものの、GRPを行っても、治療により客観的な音声のパラメーター(jitter, shimmer, NHR, MPT)を悪化させることなく、自覚的な音声評価(VHI)を有意に改善させることも突き止めた。これらの成果は、研究期間を通じて、国際学会(招待待講演2回、一般演題2回)、国内学会(招待講演11回)、論文7篇、著書5篇にて公表し、啓発に努めた。 咽喉頭乳頭腫は、再発・多発を繰り返して複数回の手術を要し、さらに音声障害を引き起こすことで患者QOLを障害する。前述のように本研究は、この疾患に対する治療のなかでも、とくに日帰りレーザー手術に着目してその治療効果を検証した。本疾患は、個々の患者・家族にとって心身の負担が大きい一方で、全体の患者数が決して多くはない希少疾患であるために、研究が推進されにくいという宿命を持っている。このような疾患に関して、1つの施設で治療を行った、まとまった数の患者で検証を行った本研究の学術的価値は高い。また、今回検討した日帰りレーザー手術は、低侵襲で時間的・経済的にも負担の軽い治療によって患者の社会活動性維持に貢献できると考えられ、社会的意義も充分と考えている。
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