申請者らは、扁平上皮癌に着目し、癌幹細胞の探索を進めてきた。その結果、CD271(神経成長因子受容体)を発現する細胞が、癌幹細胞であることを見出した(PLoS ONE 2013, Sci. Rep. 2016)。CD271は、それ自身が扁平上皮癌(特に頭頸部癌、肺扁平上皮癌)において、造腫瘍能・治療抵抗性・増殖能・遊走能を制御しており、CD271陽性細胞を標的とすることで、腫瘍抑制効果が得られた(Sci. Rep. 2016, Lab. Invest 2019, Cancer Lett 2019)。しかし、CD271がどのような経路でこれらを制御しているのか、分子機構は不明である。本研究では、CD271及び CD271-CDKN1Cシグナル経路を標的とした治療法の確立を目指す。具体的には、下咽頭がん細の増殖を抑制するCD 271 阻害抗体の作成、CD271-CDKN1C シグナル制御因子・制御経路の探索を行い、更に、CD271ノックアウトマウスを用いたCD271-CDKN1C経路阻害化合物の探索を行い、CD271およびその下流経路を標的とした治療法を検討する。 本年度はCD271のどのドメインが重要かをdeletion mutantを作成して検討した。deletion mutantを強制発現し、癌の悪性度に関わるかどうかを種々のアッセイ(増殖能・造腫瘍能・浸潤能・スフェア形成能・オルガノイド形成能)で検討した。
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