研究実績の概要 |
哺乳類の体内時計は視交叉上核によってコントロールされていることが広く知られている。しかし、最近の報告ではマウスの網膜がこの中枢時計(視交叉上核; SCN)からの命令なしに、直接外部の明暗サイクルを感じ取り、光同調ができるということが示された。この局所同調メカニズムが、眼圧時計および眼圧を形成する房水産生場所である毛様体の局所時計にも存在することを確認するための実験を行なった。第一にマウスの虹彩及び毛様体におけるOpsin4およびopsin5の発現をRT-PCRにて確認したが、一方で同じくOPN4, OPN5を発現している網膜や角膜とは異なり、虹彩毛様体のみおよび網膜と角膜と共培養をin vitroで行っても、PER2::luciferase knock in マウスで確認できる範囲では光に感受性はないようであった。Opn4-/-;rd1/rd1(melrd)マウスを用いて、melrdマウスが明期にactiveになったタイミングで24時間経時的に眼圧を測定し、wild-typeの日内変動と比較することで眼圧日内変動は光に直接同調することなくSCNのシグナルを受け取っていることを解明した。さらにそのSCNから眼圧日内変動形成のシグナル伝達物質として、副腎ホルモンであるグルココルチコイドが重要な役割を果たしている可能性を示した。さらに、眼圧日内変動における毛様体局所時計の役割を解明するためにPAX6-alpha-creマウスを用いる実験をおこなった。PAX6-alphacre; Rosa26tdtomato(Ai19)マウスを作成し、PAX6-alpha-creの毛様体特異的な発現を確認した。今後このマウスを使用して毛様体特異的に種々の遺伝子をconditional KOすることで、眼圧日内変動と毛様体機能との関連を調べる計画をしている。
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