研究課題
本研究では,網脈絡膜循環の自己調節機能を明確にすること,網膜疾患における自己調節機能の異常も含め網脈絡膜循環の変化との関連を調べることを目的として研究を進めてきた.眼圧上昇時には,脈絡膜血流動態には存在しないと考えられてきた自己調節が存在すること,および,血流動態と形態学的な変化との関連として,脈絡膜血管成分と血流変化との間には有意な関連があることを見いだし報告した(IOVS, 2017). 研究代表者は眼血流においては視神経乳頭部で女性では男性より有意に血流が速いことを初めて報告したが(IOVS, 2015),本年度にはその原因を解明し,論文としてまとめた(Scientific report, 2017).すなわち,ヘモグロビン量が少ない人では血流が速くなるメカニズムが存在し,女性では男性よりもヘモグロビン量が少ないので,結果として女性では血流が速いことを報告した.さらに,網膜疾患における血流動態として,網膜剥離に対する強膜内陥術後の詳細な血流変化ならびに形態変化との関連について論文としてまとめた(Scientific report, 2017).網膜剥離眼では眼血流が正常眼に比べて低下している.これは剥離眼では視細胞が機能しないので,血流の需要が減っているが,剥離網膜が復位することで,視細胞が機能することで血流動態が回復することを見出した.また,種々の条件下における眼循環動態の変化について調べ,データを蓄積することができた.また網膜疾患においては網膜剥離眼のみならず,多くの種類の網膜疾患おいても眼循環動態の変化のデータを蓄積することができ.これらの結果は順次,学会で報告し,論文として投稿する予定である.
2: おおむね順調に進展している
本研究では,網脈絡膜循環の自己調節機能を明確にすることや,自己調節機能の異常も含め網脈絡膜循環の変化との関連を調べることを目的としている.本年度には自己調節機能に対する論文を報告することができ,また今まで不明であった,眼血流における男女における血流動態の解明を行い,論文として報告することができた.また,種々の条件下において眼循環動態がどのように変化するかについて調べることができ,それらのデータを蓄積することができた.また網膜剥離,網膜静脈閉塞症などの疾患においても眼循環動態の変化のデータを蓄積することができ.当初の目標を達成できているものと考えられる.
正常人眼における自己調節機能を眼圧上昇時のみならず,酸素投与時や血圧上昇時などの負荷時においても解明し,論文としてまとめる.さらにそれらの自己調節機能が網膜疾患でどのように正常眼と異なる変化を呈しているのかを解明し,網膜疾患の早期発見や予後を調べる方法について検討を進めていく.また,網膜疾患における血流動態と機能的・形態的な変化との関連についてデータを蓄積していく.動物実験においてもヒトにおいては負荷を行うことができないような自己調節機能についての研究を進める.
本年度において,論文校正費を節約することができたため次年度使用費が生じた.次年度では引き続き,研究に関する論文校正費や投稿料に使用する予定である.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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