研究実績の概要 |
本研究では,網脈絡膜循環の自己調節機能を明確にすること,網膜疾患や緑内障における自己調節機能の異常も含め網脈絡膜循環の変化と構造的・機能的変化との関連を調べることを目的として研究を進めてきた. 緑内障は眼圧上昇に伴い視神経乳頭周囲の網膜神経線維が脱落していく疾患であり,視神経乳頭部における血流動態が緑内障の進行に関与している可能性が指摘されていた.本年度は緑内障における視野欠損という機能的変化,視神経乳頭部の構造的変化および眼血流変化との関連について検討した.視野欠損が生じるという機能的変化よりも神経線維層の脱落という構造的変化が先んじて生じること,および機能的変化が収束してもその後に血流変化が生じることを突き止めることができた.このことから,緑内障の早期発見には,構造的変化を調べることが重要になり,後期の経過を診る上では血流変化に注意することの重要性を報告した(Scientific report, 2020). また糖尿病網膜症に対する加療として,通常とパターンスキャンレーザーによる網膜光凝固後の網膜血流動態について,レーザースペックルフローグラフィーを用いて検討した.前増殖糖尿病網膜症に対して網膜光凝固を行うと術後3ヶ月まで通常の光凝固とパターンスキャンレーザーともに経時的に網膜血流が低下するが,パターンスキャンレーザーで行なった方が有意に通常の光凝固よりも血流低下が少ないことを見出し報告した(Medicine, 2019). また,正常眼では網膜上方と下方では血流量が異なること,男性と女性では血流流速が異なることなどの基本的データや種々の条件下における眼循環動態の変化について調べ多くのデータを蓄積し,これらをまとめて2019年眼循環学会シンポジウムで報告した.
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