研究課題/領域番号 |
17K11423
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 智昭 京都大学, 医学研究科, 助教 (50549095)
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研究分担者 |
大音 壮太郎 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (10511850)
鈴間 潔 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80335265)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 糖尿病黄斑浮腫 / 眼底イメージング / 視細胞障害 / 神経変性 / OCT angiography / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
我々は、新たな眼底イメージング機器であるOCT angiographyを用いた研究で、糖尿病網膜症眼において、3層ある毛細血管叢の内層もしくは外層のみが脱落する所見が、神経グリア組織における変性病変や嚢胞様腔と対応していることを見出した。また、脈絡膜毛細血管板における血流障害に関しても報告し、視細胞障害や視力障害との関連が強いことを示した。これらの研究により糖尿病網膜症における視機能障害の原因となる未知の病態の一部が明らかになり、今後展開予定である分子機構の研究の対象となる。 また、日常診療で使用される眼底診断機器である光干渉断層計(OCT)を用いた解析で、一般的な治療法である抗VEGF療法の治療回数や視力改善と関連する因子として、網膜厚、嚢胞様腔内のhyperreflective fociが重要であることを見出した。これらは、実臨床において複数の治療法が存在する糖尿病黄斑浮腫の治療を最適化するために有用な情報である。つまり、労働世代の視力障害の大きな原因となっている本疾患の治療の質を向上させることで、社会的貢献が可能であると考えられる。 また、我々は血液サンプルを用いた研究で、糖尿病網膜症における新たな自己抗体を複数見出してきた。また、特定の自己抗体は、糖尿病黄斑浮腫の標準療法である抗VEGF療法の治療効果予測に有用であることを見出し、学会報告した。また、その視細胞への障害のメカニズムを明らかにし、現在論文準備中である。また、糖尿病黄斑浮腫で抗体価が上昇する自己抗体を他にも見出し、その診断的価値を見出した。その内容に関しても論文準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究期間の初年度の目標は、眼底イメージング装置を用いて、新たな病変を見出すことであった。実際にOCT angiographyを用いて、新規の血管病変に対応する神経障害を示唆する所見を見出しており、おおむね予定通りに進捗している。 また、次のステップである分子機構の解明に関しても、手掛かりとなる自己抗体の抗体を複数見出しており、滞りなく研究が推進されていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、すでに取得しているOCT angiographyやstructure OCT、超広角眼底写真などには、いまだ解析されていない所見が多々含まれている。その系統的な評価を継続し、更なる臨床パラメータの発見とその臨床的意義の検討を予定している。 我々は、Western blot法を用いた自己抗体のスクリーニングにより、糖尿病網膜症患者の血清中には、網膜抗原に対する自己抗体を多数認めることを確認した。生化学的手法と質量分析を組み合わた自己抗体の同定方法を用いて、その候補を複数同定している。今後も継続的に、新規自己抗原の同定を進めていく予定にしている。大学院生は生化学的手法に習熟しており、学内の質量分析室の支援も受けられるように手配もしている。更に、自己抗体の抗体価の定量的に評価する。患者血清サンプルは既に十分量が冷凍保存されており、また、その手技に関しては大学院生がすでに経験しており、滞りなく推進できるものと考えている。また、抗体価と新規所見を含めた臨床データとの関連性を統計的に解析することで、糖尿病網膜症における各々の病態を惹起する自己抗体の候補を絞り込む。 既に見出されている自己抗体に関しては、その病態への寄与を評価するために、動物実験を予定している。つまり、患者血清の自己抗体をモデル動物の眼内へ投与し、その網膜の機能及び形態的変化を組織学的及び免疫組織学的に検討する。これらの手技は、研究責任者及び大学院生が習熟しており、滞りなく推進されると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想していたよりも物品費が少額で済んだために、次年度使用額がわずかに生じた。次年度の物品費がやや高額になる可能性が高く、それに充てる予定である。
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