研究課題
我々は眼底イメージング、特に、光干渉断層計アンギオグラフィー(OCTA)や光干渉断層計(OCT)を用いた臨床的な解析を行った。特に、糖尿病網膜症における血流障害は3次元的に生じており、それぞれの層に相当する神経網膜の形態的な障害を伴っていることを報告した。また、脈絡膜血流障害も同様に進行しており、視細胞障害と同期していることも明らかにした。糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する第一選択となる治療法である抗VEGF療法の予後予測に重要なOCT所見を見出し、複数報告している。視力改善に重要なhyperreflective foci、投与回数に関連が強い中心網膜厚、また、新たなOCT所見であるhyperreflective wallsは、DMEの遷延を予測する因子であった。DMEにおける神経障害の特徴の一つは、網膜の各層に特異的な病変を生じることである。そのことから、我々はDMEにおける自己抗体の臨床的意義を検討した。まず、Western blot法で自己抗体の存在を確認した後、新規自己抗体として、抗fumarase抗体と抗hexokinase 1抗体を新たに同定した。これらの自己抗体は、糖尿病患者におけるDMEの存在と関連が強い因子であることが、多変量解析から明らかとなった。特に、抗fumarase抗体を用いたtranslational researchでは、補体と共にマウス網膜に投与すると視細胞障害が再現された。つまり、本自己抗体が、病的メカニズムを促進することが示唆され、新たな治療標的となりうることが推測される。また、抗fumarase抗体は抗VEGF療法の治療効果の予測にも有用であることが、臨床的なデータから明らかとなった。
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