研究実績の概要 |
様々な要因による眼底出血患者54名(A群)と眼底出血のないもの53名(B群)の唾液を採取し,PCR法で歯周病菌(P.g),Streptococcus mutans(S.m)を認めるかどうか判定した。更にP.gのうち特に病原性が強いと言われるfimⅡ型の線毛を有するもの(fimⅡ)と,S.mのうち出血性の全身疾患に関わるcnm遺伝子を有するもの(cnm)であるかどうかも同時に判定した。 A群の眼底出血の原因疾患は,糖尿病網膜症が28名,網膜静脈閉塞症16名,乳頭出血5名,加齢黄斑変性症3名,その他2名であった。B群は,白内障患者(眼底疾患なし)23名,白内障・緑内障患者16名,糖尿病患者4名,健常成人10名であった。 P.g,fimⅡ,S.m,cnmが陽性となった人数は,A群ではそれぞれ37名, 7名, 44名, 14名,B群ではそれぞれ40名,2名,42名,8名であった。P.gおよびS.m陽性となったものは両群とも大きな差はなかったが,fimⅡ陽性P.gはA群で7名,B群で2名,cmn陽性S.mはA群で14名,B群で8名と差がつく傾向を認めた。特に糖尿病網膜症の病期が進むにつれfimⅡ陽性,cnm陽性患者が多くなる傾向を認めた。 次世代シークエンサー解析を用い,107名の唾液中の口腔内細菌の占有率を調査した。上位10位を占めた細菌は, Streptococcus, Veillonella, Neisseria, Fusobacterium, Mannheimia, Bacteroides, Cellulomonas, Gemella, Porphyromonas, Prevotellaであった。網膜出血,硝子体出血の有り無しの等の条件で細菌の占有率に差がでるか検定を行ったが有意な差を認めず,シークエンサー解析で眼底出血に関連のある新たな口腔内細菌の推定はできなかった。
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