眼球も身長と同様に成長期に伸長するが、日本人の眼球成長を長期的に追った研究はほとんどない。本研究では小児でも簡単に検査できる眼球の大きさを測定する光学式眼軸長測定装置と、眼底の立体構造を取得できる光干渉断層計を用いて小学3年生からの集団と中学1年生からの集団の2群の眼球成長を継続的に観察した。前回の科研と合わせて研究期間の6年間で、小学生3年生は中学2年生(6年間)、中学生1年生は中学3年生(3年間)まで検査が終了し、今後も小学3年生から開始した集団は検査を継続する予定である。 眼時点の成果として、眼球の成長は身長と同様に栄養状態に左右され、食事が日本的よりも欧米的である方が、body mass indexも大きく、眼球も大きいことが判明した。また、眼底の血管走行が成長とともに様々なパターンでシフトしていくことを報告した。我々が以前報告した成人の緑内障患者で初期から中心の視野異常が生じる眼や、正常眼と比較する光干渉断層計の緑内障診断精度に関与するのが、この眼底の血管が黄斑側にシフトする眼であり、成長期の眼球形状の変化の個人差が緑内障の特徴と関連することが判明した。さらに、眼球の後極部は球状ではなく、小学生や中学生の時点でもすでにわずかながら凸凹していることや視神経乳頭の鼻側では成長に伴って神経線維が隆起して、一見視神経乳頭が腫脹しているように見えることも判明した。 眼球が大きくなるほど近視になるが、今回の研究では栄養状態が眼球の大きさ、すなわち近視の進行に影響することや、眼球形状の個人差は眼球の成長に伴って大きくなり、将来の眼疾患の特徴につながるであろうことが示された。
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